──中野さんは、ポルトガルとは何か縁はありました?中野:いや、全くなくて。サッカーの国だとか、種子島に鉄砲を伝来した国だとか(笑)。あとは、僕は九州出身なので、長崎に行くとカトリック教会がたくさん建っているのを見るけど、それくらいのイメージしかなかったんですよね。
──それが今回、日系ポルトガル人の役ということで、ポルトガル語にも挑戦したそうですね。1ヶ月半で、現地の人とコミュニケーション取れるくらいまでになったと聞いて驚きました。中野:もう、受験勉強みたいでしたね(笑)。ポルトガル語の文法を網羅しつつ、そんなに小難しくなさそうな本を1冊購入して、それを7日から10日で丸暗記(笑)。後はひたすら応用ですね。ずっと独り言を言ってました。
柄本:すげえな!!
中野:いやもう、丸暗記している10日くらいは気が狂うかと思ったよ(笑)。あまりにも長時間やっていると、体が持たない。3時間くらいで知恵熱というか、本当に頭が痛くなってきて。10代や20代の頃はそんなことなかったのに、「老いたのかな」と思いましたね(笑)。だから、1日のうちまず 3時間くらい集中してやって、後はひたすらYouTubeなどでポルトガル語を流す。とにかく浴びる、自分を漬け込むような気持ちで学びました。
柄本:いや、その10日間で絶対に老けてるって。
中野:あははは。でもまあ、わりと常にそういう人生だったから、人より老けてるのかもね(笑)。
柄本:だって俺の一つ上? そんなもんしか違わないとは思えないよ、この堂々とした雰囲気。
©2017 『ポルトの恋人たち』製作委員会中野:いやいや。佑くんなんて、ポルトガルの現場に素足に下駄で現れたじゃん、サッカーのベンチコートを羽織って。その落ち着き方たるや……(笑)。年が違うどころか、生きてる時代が違うんじゃないかと思ったよ。時空を超えた落ち着き方。
柄本:あははは。でもさ、楽器も習ったんでしょ? 俺なんかよりやることいっぱいあったよね?
中野:そうなんだよね。俺、イタリア語とフランス語なら話せるのに、なんでポルトガル語なんだ? ギターやピアノならまだ触ったことあるのに、なんでポルトガル・ギターなんだ?って。でも、準備が恐ろしく大変だったぶん、現地ではすんなり馴染めましたね。ご飯は美味しいし、人はみんな洗練されているし。
柄本:ご飯、美味しいよね。「イワシの塩焼き」とかあって。
中野:主食で米が出てくるのも、ヨーロッパじゃ珍しいと思うんですよね。どのレストランに行っても、米は必ずある。どのガイドブックを見ても「(日本人は)どこか懐かしさを感じるはず」って書いてあるけど、元々交流があった国だからなのか、違和感もそんなになくて。