英インディ・レーベルのCEOが語る、アーティストからメジャー契約が敬遠される理由

ーそんな中、Dittoはどういう立ち位置なんでしょうか?

インディ・レーベルとしての僕らの立ち位置は、レーベルだからメジャー系と同じような業務もするわけだけど、アーティストがたっぷり報酬を得られるようにしている。ロイヤリティの80~90パーセントをアーティストに還元しているんだ。メジャーなデジタル音源のリリースに特化してメジャー・レーベルに対抗しているんだけど、Apple MusicやSpotify、Deezerといった世界中のミュージックストアのサポートがあれば、実際にはそんなに難しいことじゃないってことがわかってきたよ。

ーチャンス・ザ・ラッパーは、インディ・レーベルの存在感を高めたのではないでしょうか? 多くのアーティストが関心を寄せているのでは?

チャンスの件はあんまり大々的に宣伝していない。そもそも、あれはチャンスや彼のチームの功績だし、自分たちの手柄を主張しようとも思わなかったからね。でも確かにチャンスはインディへの認知度をあげるのに一役買ってくれたと思う。だって、彼は世界中の多くのアーティストから、独立系のラッパーとしては世界一だと思われてるからね。インディを自称するアーティストでもたいてい大人数のチームに支えられているものだけど、彼は正真正銘のインディだ。彼のおかげで多くのアーティストがインディ業界に目を向けるようになった。僕らのようなレーベルが、うちと契約しませんか、あなたの権利はそっくりそのまま残しますから、って言ってきたら、そりゃあアーティストにとっては美味しい話だよね。

ーだから多くのアーティストがインディに転向、あるいは残留を望んでいるわけですね。でも、問題はないのでしょうか? インディ業界がいま抱えている最大の課題は何でしょう?

僕らが直面している最大の課題は、ちょうどいまコンテンツ獲得争いが拡大化していて、メジャー・レーベルが市場を独占しようとしていること。彼らはアーティストの発掘と獲得にやっきになっているが、アーティストと契約にこぎつけるまでに多くの損失を出すことになる。一番の問題は、(インディ・レーベルが)せっかくアーティストを育てても、メジャー・レーベルが途方もない額を提示して、むだにアーティストと契約しているということ。レコード会社がこうした手に出るたび、アーティストは彼らのやり方に不満を覚えるようになるんだ。

インディ・レーベルの競争相手は、アーティストに1万ポンドの契約金を渡して、500万ポンドの損失を出すような会社だよ。10年前に僕が起業したときは業界全体からくそみそ言われたけど――絶対うまくいかないさ、ってもの笑いの種にされたもんだ――(メジャー・レーベルは)今も昔もやってることは同じ。アーティストを青田買いしたいなら、まずは(インディ・レーベルで)契約のないアーティストを発掘すればいいと思ってるんだろうね。エド・シーランのようなアーティストは、メジャー・レーベルに名前を知られる前から、インディ・レーベルに楽曲を送ってくる。だから目下の競争相手は、僕のビジネスの真似をしてくるメジャー・レーベルだね。おかしな話だよ、だって彼らと違うことをしようと始めたビジネスなのにね。

Translated by Akiko Kato

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