英インディ・レーベルのCEOが語る、アーティストからメジャー契約が敬遠される理由

ー従来の音楽業界が信用を失っているという話題に戻りましょう。業界は、全体的な信用回復の解決法をいまだ見いだせていないようですね。

聞いた話だと、20年前は(いくつかのメジャー・レーベルが)アーティストのロイヤリティの額面を文字通りぜんぶ黒塗りしていたそうだ。そうやってアーティストに額面を知らせずに、レーベルが全部利益をかすめ取って、自分たちの取り分や支払額を勝手に決めることができたわけだ。著作権の所有権と透明性の確保は、いまでも音楽業界の大きな課題だ。僕も最近気になっているんだけど、ブロックチェーンのようなものを使えば、アーティストにあらゆる情報を公開して、正当な支払いをすることができるだろう。でも、現在のブロックチェーンの立ち位置は、1994年当時のインターネットと同じ。まだ誰もちゃんと全容を把握できていない。

ー音楽業界にブロックチェーンを導入する利点について教えていただけますか?

ブロックチェーンはいわゆるサプライチェーンの一つで、改竄できないオープン型の情報台帳だ。情報伝達はピアツーピアで行えて、すべての取引が可視化される。音楽業界にどう関係するのかって? 例えばブラジルでは、ラジオ・オンエアの収入の80%はアーティスト本人の手に渡らない。一カ所に集められた後、レーベル間で分割するんだ。透明性もなにもあったもんじゃない。あるいは、仮に僕が曲を作ったとして、誰かがその曲をインドでオンエアしたとする。オンエアの事実を示す証拠がないから、著作権料を手に入れることはできない。でもブロックチェーンは、曲ごとにサプライチェーンを作り出すことができるんだ。曲を作ったら、できるだけ多くの人に楽曲の契約者になってもらう。そうすることで、世界のどこでオンエアされようとも必ず対価が支払われるという仕組みだ。オープン型だから透明性が高いし、誰でも閲覧できる。レーベルとしては、できるだけ避けて通りたい話だろうけれどね。

ー他に音楽業界で見過ごされていることはありますか? 多くの人々に目を向けてほしいと思うことは?

僕らはいま、危機に瀕していると思う。現在Spotifyは選曲に関して完全に独立した権利を持っている。彼らはインディ市場に協力的で、僕らに対してもメジャー・レーベル同様のサポートを提供してくれる。だが、あと2~3年のうちに問題になるだろうと懸念されているのは、Spotifyがロイヤリティに相当の額を支払っているという点だ。その分、大手レーベルは何十億もの額を受け取っている。Spotifyは現在赤字傾向だから、そのうちSpotifyからの収入は減少するんじゃないかな。これ以上増え続けるということはないと思う。そのうちいつか、Spotifyの経営維持のために支払額を見直す必要が出てくるだろう。最終的には支払い額を一律化することになるかもしれない。デジタルサービスのプロバイダーにとっても、アーティストにとっても、全員が納得できるサービスを提供するためには、そうする必要があるだろうね。

Translated by Akiko Kato

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