米中間選挙:フロリダ州初の黒人知事なるか? 民主党候補の挑戦

オバマ・タイプの候補者の中には、オバマのように先天的な雄弁家で、黒人であることを棚に上げたりしないことで支持を集めてきた候補者も間違いなくいる。多くの政治家同様、ギラムは自らの不毛のルーツに誇りを感じており、母親がスクールバスの運転手をしていた話や父親が建設現場で働いていた話をよくする。7人兄弟のギラムは、家族の中で初めて大学を卒業した。彼はまた演説の主要テーマとして、2018年7月に白人によって射殺された28歳の黒人マーキス・マグロックトンを引き合いに出し、フロリダ州の“スタンド・ユア・グラウンド(正当防衛)法”の人種差別的な面にスポットを当てた。彼はまた、移民税関捜査局(ICE)の廃止やトランプ大統領の弾劾を主張している。

ギラムはまた、間もなく行われる2018年11月の投票においてフロリダ州法修正第4条案が賛成多数で承認され、フロリダ州で重罪判決を受けたために剥奪された約140万人の投票権を回復することを願っている。ギラムによると「州法修正第4条は、人々にとっての現実的な方法による政治決着」だという。「そのような人々はプロセスがどのような効果をもたらすかを理解していないが、重罪を科された兄弟姉妹や両親や親戚の存在は知っている。現行のフロリダ州法では、さらに多くの人々が投票権を失う可能性がある」というギラム自身にも、重罪を科された親族がいる。

「同修正法にかかわる興奮は現実味を帯びてきた」とミュージシャンのジョン・レジェンドは言う。彼は州法修正第4条の成立を目指し、フロリダ州で運動を続けてきた。「“この問題は自分にも関係あるので、(重犯罪歴を)カミングアウトするよ”という人もいた。黒人知事が実現するチャンスがあるということで、賛成する人も反対する人も投票に出かけると思う」とレジェンドは言う。ギラムの立候補は、共和党のリック・スコット元フロリダ州知事を相手に議席を守ろうとしている民主党の現職上院議員ビル・ネルソンも後押ししているに違いない。

選挙戦も終盤に差しかかる中、ギラムは首尾一貫して僅差のリードを続けてきた。2018年10月最終週のニューヨーク・タイムズ紙の予想では、ギラムがデサンティスを5ポイント差でリードしている。また、「民主党のトップで知事選に挑むギラムは予備選における劣勢を跳ね返すだろう」とベテラン活動家でマイアミ・ニュー・タイムズ紙のコラムニストを務め、ヒップホップ・グループのツー・ライヴ・クルーにも在籍したルーサー・キャンベルは言う。各党の予備選におけるギラムの得票数は51万7417票で、デサンティスは91万3679票だった。「地域住民へ明確に伝わっていないと思う点は、ギラムが本気で黒人の知事になりたいか、ということだ」とキャンベルは指摘する。「黒人の知事が誕生する。待ち遠しい。しかし黒人知事が我々のために何をしてくれるだろうか。かつてアフリカ系米国人の大統領がいたが、アフリカ系米国人のためにしてくれたことは少なかった。そして今、アフリカ系米国人大統領に続いてアフリカ系米国人の州知事が生まれようとしている。“我々黒人のためにあなたは何をしてくれるのか?”と問いたい」

あらゆる面からギラム“知事”は、米国発の黒人大統領と他にも共通する点がありそうだ。共和党による妨害もそのひとつ。共和党は恐らく、州議会を完全に仕切り続けるだろう。結果を期待する有権者に対して、その状況を説明するのは難しそうだ。ギラムが一公務員だった頃、「社会保障給付金の小切手が遅れている」と市民が彼に電話してきたという。これは市民が地方自治体における彼の役割を理解していなかった訳ではなく、彼らは地方自治体以上の役割をギラムに期待していたのだ。そして今、その期待はもっと大きく膨らんでいる。

「ほとんどの人は、私ができるだろうと思うことを私に投影する」とギラムは私に語った。「1度、2度、3度と私が彼らのために立ち上がり、闘ってくれることを確かめたいのだ。彼らは、実際の責任者が誰かという市民のルールなどに興味はない。彼らはただ私のことを知っている。彼らは私が仕事を片付けてくれることを期待しているのだ」

Translated by Smokva Tokyo

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