クビになったセッションズ司法長官の代理、マシュー・ウィテカーの曲者ぶり

セッションズ氏の代理を務めるマシュー・ウィテカー氏(Photo by Chip Somodevilla/Getty Images)

民主党がアメリカ下院議員の過半数を獲得してから24時間も経たないうちに、ジェフ・セッションズ司法長官がトランプ大統領による選挙後の内閣粛清の犠牲者第1号となった。セッションズ長官はアメリカ現地時間7日(水曜日)、辞任を表明した。

「貴殿の要請にお答えし、ここに辞表を提出いたします」とセッションズ氏。

トランプ大統領はTwitterで、セッションズ長官の後任候補は「後日指名する」と発表した。セッションズ氏の辞任により、2016年大統領選でのロシア介入、およびトランプ大統領側近の関与に関するロバート・ムラー特別捜査官の捜査に、次期司法長官が制限をかけてくる可能性も出てきた。次期長官の決断で、捜査そのものが中止となる可能性もある。

だが実際に交代劇が起われるまでの間、セッションズ氏の代理を務めるマシュー・ウィテカー氏が妨害してくるかもしれない。司法局によれば、セッションズ氏の首席補佐官だったウィテカー氏は臨時司法長官に就任し、ムラー氏の捜査の監視にあたる予定だ。

セッションズ氏のもとで働く以前、ウィテカー氏は保守派から不法に資金提供をうけていたNPO団体を運営しており、しばしばヒラリー・クリントン氏から追及されていた。2016年、ウィテカー氏はUSA Todayに宛てた投書記事で、クリントン氏は国務長官時代の個人メールの件で起訴および厳しく追及されるべきだと主張した。

また最近では、ウィテカー氏はムラー特別捜査官のロシア疑惑捜査の手法を非難。昨年CNNに送った投書記事では、ムラー捜査官の捜査が「度を越している」と非難した上で、ロッド・ローゼンスタイン司法副長官に対し(セッションズ長官が捜査への不干渉を表明した後、現在時点まで捜査の監視役を務めていた)、調査の指揮を要請した。トランプ大統領同様ウィテカー氏もまた、ムラー捜査官が大統領および一家の個人資産を捜査するのは越権行為だと主張していた。「ムラー捜査官は2016年大統領選のロシア介入疑惑捜査で、超えてはならない境界を越えかけている」と述べた。

CNNに出演した際には、トランプ政権がムラー捜査官の捜査展開を制限をかけるとしたらどのような手段があるか、想定シナリオを披露した。そのうちのひとつは、トランプ大統領がローゼンスタイン副長官に直接圧力をかけ、「ボブ・ミラーの予算を削減した上で、長官解雇・後任選出といった生ぬるい手段ではなく、もっと大胆な手に打って出る」というものだった。だがセッションズ長官の解雇――トランプ大統領が今回まさに起こした行動――も可能性のひとつだ、とウィテカー氏は付け加えた。「ジェフ・セッションズ氏が休会任命で更迭されても、新しい司法長官がボブ・ミラーを解雇しない可能性もある。だとしても、新長官が調査の予算を大幅に削減すれば、調査自体がほぼ中止となるだろう」

2017年8月、ウィテカー氏は個人のTwitterアカウントで、ムラー氏の捜査を「集団リンチ」にたとえた別の弁護士の投書記事を擁護した。

・マシュー・ウィテカーのTwitter
読む価値あり。「トランプ大統領の弁護士へ。ムラー捜査官の集団リンチには手を貸すな」
2017年8月7日午前10:06

来年、下院の監視・政府改革委員会の委員長就任が目されているエライジャ・カミングス下院議員(メリーランド州民主党代表)は声明を発表。議会はセッションズ氏の辞任に関する事実関係を調査する一方で、ウィテカー氏がムラー氏の捜査に干渉しないよう要求するべきだと述べた。「セッションズ氏を排除する理由はいくらでもあります――彼自らがロシアと接触を行った事実を公表しなかったことや、国境で移民の親子を引き離した非人道的な政策など――ですが、もっとも明らかな理由は、受け入れがたいものですが、ムラー氏の捜査に干渉または妨害するため、というものです」とカミングス議員は述べた。「トランプ大統領は、中間選挙が終わるまで行動を起こすのを待っていたのです。(解任は)何か月も前から噂にもなっていました。議会としては、解任の真の理由を探り、マシュー・ウィテカー司法長官代理を特別捜査官の捜査から全面的に手を引かせ、司法局がムラー氏の捜査の正当性を守れるようにするべきです」

Translated by Akiko Kato

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