米銃乱射事件、容疑者を殺人に駆り立てたものは果たしてPTSDなのか?

海兵隊入隊後の歩み

AP通信によれば、ロング容疑者は高校卒業後すぐに海兵隊へ入隊し、2008年8月から2013年3月まで在籍した。2010年から2011年にはアフガニスタンで7カ月間従軍。2009年、ハワイ駐在中に結婚したが、2011年に別居。2013年には和解しがたい不和を理由に正式に離婚している。2013年に名誉除隊となった後、ロング容疑者は3年間カリフォルニア州立大学ノースリッヂ校に通うが、卒業はしていない。その後サンタクララのキャニオンズ短期大学に二学期通った。

さらにAP通信によると、ここ数年はサウザンド・オークスで母親と同居していた。隣人らの証言によれば、親子はしばしば大声で激しい喧嘩をしていたという。4月には、家屋から叫び声や物音が聞こえるという近隣住民からの通報を受け、警察も出動した。ヴェンチュラ群保安局のジェフ・ディーン保安官によれば、警官が駆け付けると、ロング容疑者は「いくらか苛立った様子で、不可解なふるまいをしていた」と言う。だが精神衛生の専門家が出した結論は、本人の同意なしで精神鑑定を受けさせることはできないというものだった。ディーン保安官は、捜査官はロング容疑者が心的外傷後ストレス障害(PTSD)を患っていたのではないかとして捜査を進めていると述べた。

「明らかに、彼の精神状態は何らかの影響を受け、それが原因でこのような事件を起こしたのでしょう」とディーン保安官。

退役軍人省の広報担当者カート・カシュアー氏はUSA Today紙とのインタビューに答え、ロング容疑者が「退役軍人健康保険に加入していた記録はない」と述べた。精神衛生の専門家らは、今回の乱射事件の原因をPTSDや精神疾患とする見方に警鐘を鳴らしている。エモリー大学医学部で精神的外傷・不安障害回復プログラムのディレクターを務めるバーバラ・オラソフ・ロスバウム教授は、USA Todayのインタビューに対し、PTSDが原因で「過敏的になったり、攻撃的になる」ことはあるが、殺人の原因にはならないと言う。

「人々がPTSDを抱える退役軍人を恐れている、という話を聞いて驚いています。彼らには暴力傾向があると言われますが、そんなことはありません」とロスバウム教授。「PTSDには既にいくつもの偏見がついて回っています――退役軍人や従軍中の兵士に対してもです。これ以上そうした偏見を煽るのは、彼らに害を及ぼすでしょう」

海兵隊時代にロング容疑者と同じ連隊に所属していたトーマス・バーク牧師はCNNとのインタビューで、違った角度から同様の意見を示している。

「PTSDから殺人への衝動が生まれるのではありません」とバーク牧師。「大勢の若者を可能な限り残虐になるよう訓練し、そのくせ帰還しても問題ないだろうと勝手に期待する。若者にこういう仕打ちをしながら、彼らが助けを必要とするときに何もしてやらないのが問題なのです」

Translated by Akiko Kato

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