マーベル・ヒーロー生みの親スタン・リー氏逝去、貪欲に物語を作り続けた人生

脚本家、編集者、マーベル・コミックの元発行責任者兼社長、スパイダーマンの共同発案者でもあるスタン・リー氏が95歳で死去 (Photo by Ron Galella, Ltd./WireImage)


1922年12月28日生まれ、本名はスタンリー・リーバー。彼のその後の経歴から、つい「孤高の天才アーティスト」だったと思いたくなるが、実際はそうではなかった。もともと脚本家として名を馳せたが、彼の書く文章は誰の目から見ても、とくに秀でたところはなかった(もしコミック業界に足を踏み入れてから最初の20年で辞めてしまっていたら、今の彼の名声はなかっただろう)。だが、彼は協調性がずば抜け、指導力やビジネスの才能に長けていた。彼が1961年から1972年の間にヒットさせたコミックブックには、躍動感と歓喜がほとばしっている。

この時期のリーは、1939年に最初の従業員として雇われた小さなコミックブックの出版社を一人で切り盛りしていた(彼のいとこの夫マーティン・グッドマンが発行責任者を務めていた)。1961年当時、マーベルは毎月10作品を出版しており、恋愛もの、西部劇、戦争もの、ディーンエイジャー向けのコメディ、モンスター系など、ほとんど全て、リーが一人で脚本を手掛けた。時間を節約するために、彼はストーリー全編の脚本を書く代わりに、おおまかなあらすじを作り、共同制作しているアーティストたちに渡した。その後出来上がったアートワークに、セリフやキャプションを加えていくのだ。

『ファンタスティック・フォー』第1話は、コミック界の重鎮ジャック・カービーの作画によるもので、表紙に書かれた日付は1961年11月。当初は、モンスター系とスーパーヒーローものの融合として実験的に作られた。第2次世界大戦中に爆発的人気を博したジャンルだが、当時はすでに時代遅れだった。その9か月後、リーとスティーヴ・ディッコのSFシリーズ『アメイジング・ファンタジー』の最終話で、スパイダーマンが登場した。スーパーヒーロー軍団に突如現れた乱入者は、奇妙な能力を手に入れた、ガリガリのシニカルな10代の若者。彼の最初の冒険は、恐怖と屈辱の涙で幕を閉じる。

どちらの作品も大ヒット。その後数年のうちに、リーが脚本・編集を手掛けたスーパーヒーロー・シリーズはアメリカのコミック市場を独占した。『Tales of Suspense』『Journey Into Mystery』『Strange Tales』からはそれぞれアイアン・マン、ソー、ドクター・ストレンジが生まれ、リーは新たなチャレンジに乗り出す。いわゆるクロスオーバーの手法だ。彼が生んだキャラクターはみな同じ世界の住人で、定期的に互いのストーリーに登場する。サブマリナーでは伏線として描かれたストーリーが、キャプテン・アメリカの物語に発展したり、デアデビルの物語に影響を及ぼす。非常に巧妙なこの手法は、現在も受け継がれている(マーベル・シネマティック・ユニバースがいい例だ)。

リーは最終的にコミックの原案作成から退き、マーベル所属のアーティストたちに自由に物語を展開させた。その結果、作品はより向上し、大胆になっていった。彼はリングマスターとしてすべてを見守り、ファンクラブ「Merry Marvel Marching Society」を盛り上げ、毎号ごとにコラボレーションしたアーティストたちをからかい(彼の名前はつねにクレジットの一番上に記載された)、たいてい読者を驚かせた。1960年代中盤を迎えるころには、ある種の人物像を作り上げていた。陽気で、口達者で、どこかちょっぴりいかがわしく、誇大妄想じみたお祭り好きなお騒がせ男、「スタン・ザ・マン」として。

リーは『アメイジング・スーパーマン』で第100話まで、『ファンタスティック・フォー』では第114話まで脚本を手掛けたが、これらは今日のスーパーヒーロー・コミックの源となるものだ(のちにディッコとカービーは共同で、自分たちが創作チームとして十分評価されていないと、もっともな言い分を主張した――だが、リーとの共同作業で生まれた作品は、彼らの最高傑作だった)。脇役でさえも、忘れられない印象を残した。にやけた笑みを浮かべる新聞社の編集長、J・ジョナ・ジェイムソン。寡黙な帝王、ブラックボルト。どこか憎めない戦士、ヴォルスタッグ。リーが書くセリフは時に古めかしく、誇張されすぎるきらいがあるが、誰も真似できない輝きを放っていた。対照的に、別の脚本家がクレジットされているソーやアント・マンなどのエピソードは、なんとも単調で無味乾燥だ。

Translated by Akiko Kato

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