『ウォーキング・デッド』リックとの別れ、共に歩んだ8年間

脚本家たちが意図してかどうかはわからないがリックがドラマから退場することが原因でいくつか非常にまぬけな行動を取ることになるのはおもしろいことである。今シーズンの初めの4話はバージニア州北部の元々対立していた派閥が、消えない不信感と物資の分配の不公平さにもかかわらず協力し合おうとすることに終始する。ますます維持が難しくなっていた状況は、橋を作るために皆が協力することを夢見るリックによって更に悪化し、結果その計画は口論と暴力を引き起こすこととなる。

ではリックの最後のエピソードでは何が起こったのか?彼にとって非常に重要な意味を持つその橋からゾンビの群れを遠ざけようとする中で馬から振り落とされ金属の棒に突き刺さった後、その状況からどうにか抜け出しよろめきながらも橋の方へ歩いて行った。橋は最終的にはゾンビが渡るのを阻止するためにリックが爆破させる。(ウォーキング・デッドの大悪役ニーガンもかつてリックの壊滅的な戦略上の失態について「お前は無能だ、リック。本当にな」と言ったように)

リックは黒焦げでボロボロではあるがまだ体が動かせる状態で、素性のわからない(前シーズンで当然の報いを受ける前は前衛的な彫刻家、そしてグループのリーダー『ジェイディス』として知られていた)アンによって発見される。まだ登場していない新しいグループではあるがこのグループが所有するヘリコプターを呼んだのは彼女なのだ。そして最後の象徴的な場面としてこのエピソードの最後の数分で時間は数年後に飛び、現在プレティーンであるジュディス・グリムスが他のさまよう生存者を救っているシーンを見せる。

このようにして男くさい男のドラマはその男の娘のドラマにもしかしたらなるのかもしれない。ギンプルはすでに彼のチームの脚本家の1人であるアンジェラ・カンに制作総指揮の手綱を渡しているので、それはこのドラマの制作チームの変化と共に変わっていくのだろう。ウォーキング・デッドの焦点がどこに向かっていくのか、そしてカンと制作会社がこの時間が飛ぶ前に起こっていた様々な闘争をどのように扱っていくのかは未知である。しかし今“リック問題”は解決されたのだ。

(その多くはばかげているが)計画を持ったこの男が空に消えていく前に彼を盛大に送り出すためにドラマは彼に別れの時間を与えた。意識不明に陥った彼を夢の中で過去のシーズンで死んでいった仲間のシェーンやサシャやハーシェル(スコット・ウィルソン、ご冥福をお祈りします)と会話させたのだ。彼らは皆最後にもう一度だけリックと話し、彼が学んできたこと、リーダーシップやサバイバル、そして彼が持つ力を最大限に生かすことについて語った。リンカーンとリックにはそんな最後のお別れがふさわしいだろう。

しかし少なくともこの8年間ウォーキング・デッドを見てきた我々が言えるのは、その短い会話によってこのドラマでリック・グリムスができること、見つけ出せることがもうほとんど残っていないということも明確にされたということだ。我々はテレビでもう十分に彼のような男たちをみてきた。このテレビのアンチヒーローはもう死ぬべき時だったのかもしれない。

Translated by Takayuki Matsumoto

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