マライア・キャリーがどん底から復活、新たなマスターピース『コーション』に迫る

ソングライター/リリシストとしても本領発揮

先日は<ソングライターズ・ホール・オブ・フェイム>にノミネートされたマライア。本作においても全曲のソングライティングを手がけ、遺憾なくそのユニークな才能を発揮する。恋人(億万長者の元婚約者?)に対して”荷物をまとめて出て行ってよ”と三行半を突きつける「GTFO」、”ノーと言ったらノーなのよ!”と繰り返す「ア・ノー・ノー」では、ユーモアを交えつつもディーヴァっぷりが全開だ。自身の取扱説明書とも言える「コーション」では、やたら面倒臭い女子になって苦笑を誘う。かと思えば「ワン・モー・ゲン」では”もう一戦交えましょうよ”とセクシーに迫り、「ウィズ・ユー」では”あのボーン・サグズンの曲の頃から〜”と歌って、彼女がボーン・サグズン・ハーモニーと共演した「ブレイクダウン」(97年のアルバム『バタフライ』収録)の頃を振り返る。

もちろん、シリアスなメッセージも放たれる。本編ラストを締め括るピアノ・バラード「ポートレイト」では、自身の過去や人生観を赤裸々に紐解いてみせ、またボーナス・トラック「ランウェイ」では”生き延びたいのなら自分を守ること、恐怖を乗り越えて飛び立つのよ”と歌いかけ、LGBTQをはじめ全てのマイノリティの人々に声援を贈る。彼女自身のバイレイシャル(ミックス)であるが故の苦悩や差別体験も重ねられている。



本国アメリカでは早くもマスターピースと呼ばれ、絶賛されている本作。アルバム『MIMI』(2005年)と比較する人も多く、あの大復活劇を思い出させるのは、当時の状況と似通っているせいかもしれない。9.11の多発テロの当日にリリースされた『グリッター』のサントラ(2001年)で散々こき下ろされ、レコード会社を移籍して臨んだ『チャームブレスレット』(2002年)でも思う結果を出せずに低迷。そんな逆境から一発奮起した『MIMI』で音楽的にも商業的にも大成功を収めた。一旦どん底を見ては、再び這い上がるマライア。”バタフライ”となって飛び立つのがマライアなのだ。

ここ数年間、ビジネス面でもプライベート面でも苦労の連続だったと彼女は言葉を濁すことなく打ち明ける。彼女にとってはスタジオこそが最も安心できる場所。レコーディング・スタジオに舞い戻り、本作を制作するのがとても楽しかったとも語る。そんな苦境があったから、それらを乗り越えたからこそ完成したのが本作『コーション』というわけだ。



<リリース情報>

マライア・キャリー『コーション』ジャケット写真

マライア・キャリー
『コーション』
発売/配信中

●国内盤CD(全11曲)
SICP-5996 / 2,400円+税
日本限定ボーナス・トラック「ランウェイ」収録
初回生産分のみオリジナル・ステッカー封入

●配信(全12曲)
1,900円
日本限定ボーナス・トラック「ランウェイ」「ランウェイ feat. KOHH」収録

●輸入盤CD(全10曲)

試聴/購入リンク: 
https://SonyMusicJapan.lnk.to/MariahCareyCautionJP

=収録曲=
01. GTFO
02. ウィズ・ユー ★リード・シングル
03. コーション
04. ア・ノー・ノー
05. ザ・ディスタンス feat. タイ・ダラー・サイン
06. ギヴィング・ミー・ライフ feat.スリック・リック&ブラッド・オレンジ
07. ワン・モー・ゲン
08. エイス・グレイド
09. ステイ・ロング・ラヴ・ユー feat. ガンナ
10. ポートレイト
11. ランウェイ ★日本限定ボーナス・トラック(国内盤CD+配信)
12. ランウェイ feat. KOHH ★日本限定ボーナス・トラック(配信のみ)

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