お茶の間をハイにする「マリファナ・シェフ」が人気

それでもマリファナシェフを求める世間の声は、マリファナそのものの需要と同じように、意思決定における保守的な考え方の2歩も3歩も先を行ってしまっているらしい。大手Food Networkや他の大手TVネットワークは、連邦法では違法とみなされる薬物の料理を扱う番組には今のところ手を出していない。したがって、マリファナ料理界のレイチェル・レイ的カリスマシェフの到来は、従来のTV以外の場所で起きる可能性が高い。カリフォルニアの新規プラットフォームProhbtd Mediaでは、『Pot Pie』と題したマリファナ専用料理のWEBシリーズを製作している。司会を務めるのは魅力的なブランディン・ラシェイ。「デジタルメディアを持ってるってことが最近のトレンドなのよ」と言う彼女は、次のシーズンで特製料理を披露する予定。「大手ネットワークではありえない自由が、ここにはあるの」



駆け出しのマリファナ料理人にとって、多くのケーブル局から門前払いを食らうことは不満のタネだ。

「たいていTVの人間は、取ってつけたようにこう言うんだ。『あなたのことは気に入ったわ、コンセプトもいいと思う。ただ、うちでは早すぎるの』」と言うレザー・ストーズ。オレゴン州ポートランドでNoble Rotというレストランを経営する彼は、旅行メインのマリファナ料理番組をやりたいと考えている。言ってみれば、アンソニー・ボーデンの番組『No Reservation』のマリファナ版だ。「人々の芽は国内に向いているみたいだけど、沿岸地域に住んでると見方が違うんだよね」。放送が始まったばかりの『Bong Appetit』に出演したことのあるストーズは、次の第3シーズンにも出演する予定。だが、WEB番組やお蔵入りになったパイロット版にも何度となく出演してきた。彼の遊び心あふれる野菜中心のマリファナ・コースは、タイのトムカーガイ・スープでスタート。子ども用シリアルに似せた盛り付けで、ハート型に切り抜いたラディッシュに、紫キャベツでできたダイヤモンドが、ココナッツミルクベースのスープに浮かんでいる。

もしトランプ大統領から学べることがあるとしたら、TVのリアリティ番組で魅力的に見えたものが必ずしも実生活でもそうだとは限らない、ということだ。本格マリファナ・フルコースを提供するレストランは、合法化されている州でも見当たらない。マリファナ風味のレアチーズを作るテクニックは、家庭の主婦、それもパンを焼く前に自分がやけどしてしまうような素人シェフには手が込み過ぎている。さらに言えば、マリファナディナー・パーティで1人当たりの服用量を守ることなどほぼ不可能。1回のディナーで使用するマリファナは、いつもの10~20倍もの量になる。おそらくだからこそ、実際に作って食べるよりも、マリファナ・フルコースの行程をTV番組で見るほうが面白いのだろう。「番組じゃなかったら、ハイになるのにこんな方法は選ばないわよ」とラヴォラートも言う。「ハッパは吸うに限るわ」

Translated by Akiko Kato

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