Spotifyはアーティストへの支払い方法を変えるべきか?

2017年、フランスで演奏するローリング・ストーンズ。(Photo by Brian Rasic/WireImage)


音楽配信サービス各社が行っている単純な「比例分配支払い」に倣って、Spotifyも著作権保有者に印税を支払っている。つまり、毎月発生する分配可能な収益の総額を配信会社がプールし、この収益を曲ごとの人気度に準じて分け合うわけだ。分かりやすく説明すると、12月の一ヶ月にドレイクの楽曲5曲が全ユーザーの2%に再生された場合、ドレイク(とこの5曲の著作権を持っているすべての著作権保有者)はSpotifyの全ユーザーが支払った総額の2%を受け取ることになる。

確かに、この支払い方法は公平に思える。しかし、実はアーティストによって事情が異なるのだ。業界関係者によると、この計算方法は大ヒット曲を量産するポップスターに有利に働くようになっていると言う。そして、それ以外のミュージシャンやアーティストたち(例えば上のジョン・ホプキンスなど)には正当な支払いが行われない。

そのため、そういうミュージシャンやアーティストは、Spotifyもその他の音楽配信サービスも「ユーザー重視」の支払いシステムを採用すべきだと主張しているのだ。この「ユーザー重視」支払いを簡単に説明すると、一人のユーザーがSpotifyプレミアムに月額9.99ドル(日本は月額980円)払って、1ヶ月間ジョン・ホプキンスの楽曲しか聞かなかった場合、このユーザーの分配可能な金額(月額6.99ドル前後)が全部ジョン・ホプキンスに支払われるというシステムだ。これは全ユーザーの何%が再生したのかを計算して、その割合に比例して分配するのではなく、個々のユーザーの再生実績を軸に分配可能金額を計算する方法と言える。

2017年11月に、現地の複数のミュージックトレード団体による共著として出版されて物議を醸したフィンランド発の研究報告書が、この議論に火を点けた。デジタル・メディア・フィンランドの報告によると、研究者たちはSpotifyが提供した2016年3月のフィンランド国内のプレミアム加入者の匿名のユーザーデータを分析した。この研究では、10,000曲と4,493人のアーティストに関する800万回以上の配信を分析し、同サイズのサンプルによって5回分析を重ねて確認作業を行った。

この分析で発見された結果は、現行のSpotifyの比例分配システムでは、(全体的な人気度の)上位0.4%のアーティストによってレコーディングされた楽曲に総額の9.9%が支払われている。しかし、「ユーザー重視」システムが導入されたと仮定したケースを分析したところ、研究者が得た結果は全く異なるものだった。つまり、このシステムだと、上位0.4%のアーティストが得るのは総額の5.6%というのだ。

この研究で算出された4.3%の差額は、残りの99.6%に分配される金額に含まれる。この報告書では、両システム間の差額が「かなり大きく」、「ユーザー重視システムは配信回数の少ないアーティストに向いている」と結論付けられている。

加えて、「比例分配システムは再生回数が最も多いトップ数人のアーティストに向いている」とも記されている。

では、公平と民主主義のために、Spotifyは貧乏アーティストに分配する印税を金持ちアーティストからくすねる潮時に来ているのか?と思う読者もいるだろうが、もう少しこの分析結果にお付き合いいただきたい。

この報告書が出た後にSpotify所属の経済部門の責任者ウィル・ペイジが行った追加の研究では、上記の研究結果に疑問を呈している。2018年8月に発表されたペイジの研究報告書では、「何百万というアーティストに紐付けされている何百万というアカウントを作って維持する」必要が生じるため、「ユーザー重視分配システムを導入して実現するには膨大なコストが必要となる」と主張している。

そして、その結果、増加し続けるシステム管理費に圧迫されて、Spotifyからアーティストに支払われる印税総額は「激減」するだろうと、同報告書は述べている。ペイジの報告書では仮定のサンプルが提示されており、平均的なアーティスト(つまり99.6%のアーティストたち)は、膨大なシステム管理費のために「ユーザー重視システムを導入しても何の得もないだろう」と結論付けている。

Translated by Miki Nakayama

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