Spotifyはアーティストへの支払い方法を変えるべきか?

2017年、フランスで演奏するローリング・ストーンズ。(Photo by Brian Rasic/WireImage)


この研究報告書では、異なる業界の似たようなシステムを例にして説明しており、スポーツジムの会員だとすると、月額を払って提供されるサービスは「すべてのマシンの使用許可を選ぶか、マシンを一切使えないことを選ぶか」の二者択一になると言う。

この報告書で議論されているもう一つの点は、2月にミュージック・ビジネス・ワールドワイドが暴いたSpotifyに対する巧妙な詐欺行為に関連している。2017年にブルガリアで発生した詐欺行為では、複数の容疑者がSpotifyのプレミアム・アカウントを1,000以上購入して、毎日24時間ループ状にした音楽を再生し続けた。

このとき、(何ヶ月にも渡って)これらの偽造アカウントで再生された楽曲はすべて詐欺師が著作権を所有していたものばかりで、その詐欺師は印税として約100万ドルの収入を得たのだ。これは最初に不正に入手した1,000以上のアカウントの購入費を遥かに凌ぐ金額である。

Spotifyはこの事件のあとで詐欺防止チームを増強したのだが、この事件が起きた当時は、この詐欺行為を途中で止めることに失敗したのである。理由は、不正に使用されたアカウントがすべて有料アカウントだったことだ。彼らは、何千ドルも払ってそれ以上の大金を稼ぐ利口なろくでなしがいるとは考えもしなかったのである。

(この詐欺事件は現在、音楽業界の経営者や重役たちの間で語り草となっている。特に、Spotifyなどの配信サービスの再生カウントを偽装する「ストリーム農場」なるものが出現し、無数のディバイスを使って偽の再生カウントを量産している。11月に暴かれた「ストリーム農場」の実態を撮影した驚愕のビデオが公開されている。)

ブルガリアのSpotify詐欺事件を受けて、イギリスに本拠地を置くミュージック・マネージャーズ・フォーラム(これはイギリスのトップレベルのアーティスト・マネージャーが集うフォーラムだ)は、Spotifyやその他の配信サービスはユーザー重視ライセンスを行うべきだと公言した。

同フォーラムのCEOアナベラ・コールドリックは、ユーザー重視システムが「ユーザーが申し込んだ以上のリターンがないわけだから、例の『見事なSpotify詐欺』のような詐欺行為を防ぐだろう」と予想している。そして、「ユーザー重視システム導入と維持の煩雑さは承知しているが、このシステムが本質的に公平で(中略)ストリーミング価値連鎖全体に透明性と説明責任(アカウンタビリティ)という利益を与えると、当フォーラムのメンバーたちは信じるようになっている」と付け加えた。

コールドリックに賛同する音楽業界の重鎮がメディア・リサーチの創設者マーク・マリガンだ。2015年に「ユーザー重視ライセンス」という言葉を最初に使ったのがマリガンである。彼は「ユーザー重視ライセンスには、強力な特性がたくさんあるが、アーティストの収入分配という点ではインパクトは弱い。とは言え、多くの点で(比例分配システムよりも)公平さがあり、みんなそうだと思うが、アーティストに対して公平でいたいと思うなら、どのタイプの公平さが良いかなんて選べるわけがない」と、私に教えてくれた。

SpotifyのライバルであるDeezerは1年以上前からユーザー重視ライセンへの移行を見据えて慎重に調べを続けており、トップレベルの業界関係者の間ではAmazonもAmazon Music Unlimitedのようなサービスでの導入に関して調査を進めているという噂がある。

ユーザー重視ライセンスに反対する者がいるとしたら、世界最大のレコード会社か音楽出版社だと大抵の人は考えるだろう。研究報告書を読むと、これらの大企業が比例分配システムから商業的な利益を得ているのも事実だ。

しかし、毎年5億5,000万ドル以上の売り上げを出し、ローリング・ストーンズも顧客の、世界で4番目に大きい音楽著作権管理会社BMGのCEOハルトヴィッグ・マズーチは変化に大賛成だと言う。

「私にとって、公平性が最も重要だ」と、もうすぐミュージック・ビジネス・ワールドワイドで公開されるインタビューで語っている。「大した違いはないと言いたい企業もあるだろうが、アーティストに『このシステムは公平で、こんなふうに機能する』と説明できるのであれば、そんなことは問題ではない」と。

そして「ユーザー重視ライセンスに関する議論は、ストリーミングの進化の新たな段階として今後話し合われる論争となるべきだ」と付け加えている。

ティム・インガムはミュージック・ビジネス・ワールドワイドの創業者兼発行人で、2015年から世界の業界関係者に向けてニュースや分析、募集情報などを提供しており、ローリングストーン誌のウィークリー・コラムも担当している。

Translated by Miki Nakayama

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