アイス・キューブが語る、オルタナ右翼、国境の壁、カニエのトランプ熱

「コンピューターの前に座って悪態ついてるだけでは、自分が臆病者のような気がしてくる」

ートランプ大統領は収監されると思いますか?

大統領だからムショにはいかないだろうな。この国がそんな醜態をさらすとは思えない。どうせ奴らは、俺たちが知らない条項やらなにやら引っ張りだして、大統領を収監することはできないとか言うんだろ。でも、他の奴らは収監されてるんだぜ、おかしいじゃないか。全部大統領の責任だろう。奴を嫌ってるわけじゃない。ただ、奴は大統領って器じゃないんだよ。恥さらしもいいところだ。奴はあらゆる手でこの国を冒涜している。毎日何かが起きてる。毎日だぜ。

ーカニエ・ウェストは今年、大統領執務室でトランプ大統領と会談しました。もしあなたにそういうチャンスが巡ってきたら、トランプ大統領になんと言いますか?

何も言うことはないね。どうして俺が奴のために、間違いを指摘してやらなきゃならない?多分奴もわかってるだろうし、気にも留めないだろうね。そんなことしても時間の無駄だよ。

ーカニエはなぜトランプを支持しているんだと思いますか?

ここは自由の国だからな。俺が思うに、間違った考えを植え付けられたんだろうね。でも、ここは自由の国。時には、相手の政治的意見も聞いてやらないと。政治的意見が違うかどうかで友達かどうかを決めるっていうのはどうかと思うけどな。ちょっとガキみたいじゃないか。自分とは考え方が違う人は友達じゃない、なんてさ。勘弁しろよ。(カニエには)そういうのを感じるんだよ。間違った考えで支持してる。でも、それも奴の意思。俺は誰のことも嫌っちゃいないし、腹を立ててるわけでもない。ただ理解できないのさ。だから、何も思うことはないよ。

ー誰にでも、意見の合わない親戚がいるものですからね。

意見が違うからって、追い出すことはできない。そんなのクールじゃない。世の中はそういうわけにはいかない。

ーアルバムの中の「Bad Dope」のインスピレーションは何ですか?

あまりにも多くの人が薬に手を出してるのを見てさ。みんなコカインからメタノールまで、けっこう強い薬をやってるだろ。その手の薬は人生ダメにしちまうからさ、「そうだ、俺を薬に例えてみれば、みんなヤバイってことがわかるだろう」って思ったわけさ。俺が超ヤバい薬で、今にもお前をダメにしてやるぜ、みたいな。この曲のアプローチも、最悪なトリップ体験という感じで書いた。質の悪いヤクをやって、メチャクチャな気分になって、メチャクチャな曲になりました、みたいな感じさ。

ーこの曲もそうですが、次の「On Them Pills」にも、デイヴ・シャペルがオピオイド中毒について語った言葉を思い起こさせます。彼が言うには、現政権のオピオイドの扱い方は、レーガン政権のコカインの扱い方とは全然違う、それは人種のせいだ、と。

たぶんそれは当たってるな。間違いないね。アメリカでは黒人よりも白人が優遇されてるって聞いても、誰も驚かない。「おい、どうなってるんだ? いったい何が起きてるのかわかんねえよ?ええ?」ってはならないだろ。おいおい、きれいごとを並べるのはやめろよ、ってことさ。なんでこうなったのかはみんな分かってる。社会が病んでるのはわかってるんだから、そいつを治そうぜ。いままさに起きてるんだから。ただ、誰もその役を引き受けたがらないって話さ。

「あと1年もすれば、やつも窓際族みたいになるだろうよ」

ーあなたは全てが汚職まみれだと考えている一方、それを正したいとも考えているんですね。

ああ。まずは自分の家が散らかっていると認識すること。そうすれば「やばい、掃除しなきゃ、家が豚小屋になっちまう」って思うだろ(笑)それから、物事が手に負えなくなってることを認識する。手に負えないことがあり過ぎるよな。だから願わくば、(アルバムで)人々を揺さぶって、目を覚まさせてやりたい。「ヘイ、ヘイ、こうなるはずじゃなかっただろ。どうにかしようぜ」って。

ーこのアルバムは2012年から取りかっていましたが、その間どんな変化がありましたか?

さまざまな理由でお蔵入りになった曲がたくさんあるんだ。賞味期限切れになったのもあれば、持ちこたえたのもある。時間を見つけて、「さあ、いまから曲作りにとりかかるぞ」って感じだったね。そうやって自分に喝を入れるのさ。しばらく我慢して、コンセプトや歌詞が自然に表れるのを待つ。それから本格的に取りかかるんだ。でも、曲作りを始めたものの、映画『ストレイト・アウタ・コンプトン』とか(アイス・キューブが運営するバスケットボール組織)Big3があったから、途中で中断しなきゃならなかった。中途半端なアルバムにはしたくなかったんだ。最終的には、『Everythang’s Corrupt』らしいと納得できる作品に仕上がった。今回収録されなかった曲の中にもいいのがあったんだが、アルバムのコンセプトには合わなかったのさ。

ー今回のアルバムで、いままでの自分と違うことや、新しいことにチャレンジしたことはありましたか?

いいや、とくにないね。

ー何も?

俺らしい作品にしたかった。唯一実験的なことと言えば「That New Funakdelic」かな。あの曲では、俺が考えるFunkadelicを再現してみた。実験的だったけど、めちゃ楽しかったよ。

ーどういうきっかけで生まれたんですか?

ゼロからトラックを作って、俺の相棒T-Mixが音楽をつけていった。今回はサンプリングはなし。俺にとっては最高のリメイクだね。ちょっと今風にして、西海岸のことをちょっと歌詞に入れてね。PファンクがGファンクになったみたいにさ。そういうマリアージュはすでにちゃんと受け入れられているんだ。

ージョージ・クリントンには聞かせました?

すっごく気に入ってくれたよ。曲を聞いているところの動画を送ってくれた。それからいろいろしゃべってたけど、とにかくすごく気に入ってくれた。俺たちは同じDNAを持ってるってな。その言葉が聞きたかったんだ。それだけ聞ければ十分だよ。

Translated by Akiko Kato

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