ローリングストーン誌が選ぶ「2018年ベスト・ムービー」トップ20

18位『バスターのバラード』

コーエン兄弟による西部劇。ガンマン、金鉱堀り、開拓にすべてをかける者たちなど、6つのストーリーで構成される。映画の出来不出来にムラがあると不平を言う者もいるだろうが、じっくり見れば、各ストーリーのテーマが巧妙に選定された短編集のように、ひとつにまとまっているがわかる。ジョエル&イーサン・コーエンは観客をケムに巻くのが大好きだが、場当たり的にやっているわけではなく、時にはブラックジョークをきかせ、時には真摯に死を見つめる。ティム・ブレイク・ネルソン演じる、歌いながら人を殺すカウボーイに始まって、ゾーイ・カザン演じる幌馬車隊の傷心娘へと続き――フィナーレは死神ご本人が登場。なんでもありのお楽しみがつまった、ワイルドな西部劇ロードムービー。

17位『COLD WAR(原題)』

ポーランドの映画監督パヴェウ・パヴリコフスキが、オスカー受賞作『イーダ』の次回作に選んだのはラブストーリー。両親の体験をベースに、政治情勢や官能的シーンを盛り込んで描いた作品だ。舞台は1949年――ウィクター(トマシュ・コト)はブロンドのセクシーな歌手ズーラ(ヨアンナ・クーリグ)に、自分の楽団に加わらないかと誘う。その後何十年にもわたる政治と個人の対立を通して、『Cold War』は欲情のままに生きる2人の波乱に満ちた関係をいきつ戻りつする。つねにバックに流れる音楽が時代背景を伝える中、純然たるモノクロのロマンスは最後まで一貫してハード。クーリグが大きな存在感を放っている。※日本公開は未定

16位『ヘレディタリー/継承

本作が監督デビューとなるアリ・アスターの手腕と、偉大なるトニ・コレットの泣く子も黙る演技のおかげで、『ヘレディタリー/継承』は今年最恐のホラー映画となった。その最たる理由は、血統、それも汚れた血が、悲嘆にくれる家族が抱える一番の問題だからだ。彼らは日々、自分たちの存在が超常的な力に脅かされていくのを目のあたりにする。アスターは徐々に物語を展開していくが、エンディングが迫るころには観客自身の心が蝕まれ、脳天が飛び出しそうなほど叫び声をあげたくなる。これぞ現代のホラーの名作だ。※日本では、現在公開中

15位『The Rider(原題)』

中国系アメリカ人クロエ・ジャオは、気性の荒い馬を乗り慣らすブランドン・ジャンドローの実話を慈愛に満ちた人物描写へと昇華させ、大ヒット・インディーズ映画を生んだ。まだ観ていないという人はぜひとも一度ご覧あれ。プロではない役者を起用し、ドキュメンタリーとフィクションを織り交ぜる彼女の手法は、サウスダコタのパインリッジ・インディアン居留地に暮らすスー族を描いた2015年の華々しい長編デビュー作『Songs My Brothers Taught Me(原題)』でも突出していた。本作では、致命的な重症を負ったジャンドローが人生と折り合いをつけ、実際に馬を調教し、家庭の危機を乗り越えて、転落した友に手を差し伸べる姿を描き出す――随所に、ジャオのゆるぎない人道精神が散りばめられている。 ※日本公開未定

Translated by Akiko Kato

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