ローリングストーン誌が選ぶ「2018年ベスト・ムービー」トップ20

11位『Vice(原題)』

『マネー・ショート華麗なる大逆転』のアダム・マッケイ監督が風刺たっぷりにディック・チュイニーをこき下ろしたこの作品は、ジョージ・W政権の権力構造にクローズアップすることで、裏で糸を引く影の実力者から現在ホワイトハウスを占拠する暴君へとつづく関連性を浮き彫りにした。チュイニーを演じたクリスチャン・ベールと(体重を増やし、特殊メイクをほどこして、まるで別人のよう)副大統領夫人リン――優しい笑顔で鋼の心を包み隠した女性――を演じたエイミー・アダムズの演技は、「並外れた」という形容詞では物足りない。ジョージ・W・ブッシュ役のサム・ロックウェルと、狡猾で好戦的な国防長官ドナルド・ラムズフェルド役のスティーヴ・カレルにも拍手を送りたい。 ※日本公開は、2019年4月予定。

10位『グリーン・ブック

黒人のクラシックピアニスト、ドン・シャーリー(マハーシャラ・アリ)が、労働者階級のイタリア系アメリカ人トニー・リップ(ヴィゴ・モーテンセン)を運転手に雇う。時は1962年、ジム・クロウ法がまかり通る南部を、コンサートツアーで回るためだ。実話をモチーフにしたこの作品で、監督兼脚本を手がけたピーター・ファレリーは、当事者の視点を映し出したに過ぎない。いわば『ドライビング・ミス・デイジー』の逆バージョンがベスト20入りを果たした理由は、モーテンセンとアリの存在。2人とも手放しで素晴らしい。『グリーン・ブック』はアメリカの人種問題をオブラートで包んでいる? そうかもしれない。だとしても、2人の息の合った演技はスタートからゴールまで目が離せない。※日本公開は、2019年3月1日より

9位『Eighth Grade(原題)』

無名の新人監督の映画でおすすめは何?と聞かれたら、間違いなくボー・バーナムの『Eighth Grade』と答えるだろう。13歳の少女(エルシー・フィッシャーが素晴らしい)が、デジタル時代の思春期の苦悩を乗り越える姿を描く。こんな映画はいままで見たことがない。※日本公開は未定

8位『First Reformed(原題)』

ポール・シュレーダー監督の、人間の本質に迫る類まれな作品。世界の秩序が乱れる中、自らの信仰心に疑問を抱いた牧師(イーサン・ホーク)を描いたこの映画のポイントは、観客を一度惹きつけたら決して離さないその手法。ホークは過去最高の演技を見せ、存在の虚しさに対するシュレーダー監督の映画的解釈を丁寧に演じてみせた。※日本公開は未定

Translated by Akiko Kato

RECOMMENDEDおすすめの記事


RELATED関連する記事

MOST VIEWED人気の記事

Current ISSUE