ケニー・オメガと棚橋弘至 「プロレス」を守る者はどちらなのか?

─厳しい言い方をすれば、もはや棚橋選手の役目は終わっていると。

ケニー:もちろん、自分のスタイルに信念を持つことは正しいと思うけど、それを人に押し付けるのはどうなのかな。俺がゲーム好きだってことは知ってるよね? だから敢えてゲーム機で例えるけど、棚橋サンは“ファミコン世代”のプロレスをしてるんだよ。もちろんファミコンは最高のゲーム機だし、素晴らしいタイトルも数多くある。だけど時代は、どんどん進化していて、ファミコンの時代には考えられなかったようなゲーム機やタイトルが続々と登場しているし、ファンもそれをエンジョイしているわけだから。

─それなのに、棚橋選手は「ファミコンこそテレビゲームの本道」と言ってるようなものだと。

ケニー:ある観点では正しいのかもしれないけど、だからといってイマドキのゲーム機に「品がない」と考えるのは大きな間違い。そういうことを言う大人って、日本語ではなんていうのかな(通訳に質問をして)……そう、“老害”だよね(笑)。

─非常にわかりやすい例えですね。プロレスのスタイルも、特にこの数年間の進化には目を見張るものがありました。そして、その進化の最前線にいるのがケニー選手であるということは、いまや世界が認める事実です。

ケニー:大切なのは、その進化が誰のためのものかってことなんだ。俺は常に、ファンを喜ばせるためのプロレスをしているよ。新日本プロレスも、今ではストリーミング配信を通じて、世界中のファンに試合を届けている。だから、世界のマーケットを意識したスタイルを追求するのは当然のことだよね。

─ラダーマッチ(リングに巨大な脚立を持ち込む試合形式)のようなハードコアからコミカルな試合までこなせる幅広さが、ケニー選手が支持されている理由でもあります。

ケニー:極端に言えば、俺が楽しませたいのはプロレスファンというよりも「人」なんだ。プロレスを知らない人が観ても、一瞬で虜になってしまうような試合を心掛けているつもりだよ。そのためならハードコア、ストロング、コミカルといったカテゴライズなんて関係ないし、たとえリングがない場所でだって、俺は常に世界が認めるベストバウトをする自信がある。でも棚橋サンは、そうじゃない。彼は新日本のストロングスタイルしか知らないし、世界のファンにも目が向いていない。



─先ほど、オカダ選手や内藤選手の名前が出ましたが、彼らはどうなんでしょう?


ケニー:新日本で闘っているレスラーとして、オカダや内藤、そして飯伏(幸太)のことはリスペクトしているよ。彼らはそれぞれ枠に収まらないスタイルを追求して、世界のファンに認められているから。たとえば内藤は古いストロングスタイルを捨て、ルチャリブレ(メキシカンスタイル)の要素を取り入れた新しいプロレスを生み出した。オカダはオカダなりに、世界を意識したスタイルを追求している。そして飯伏は……なんというか、まぁ飯伏だけのスタイルを持っている(笑)。

─飯伏選手のスタイルは、説明が難しいですからね(笑)。

ケニー:大切なのは、そういう風にたくさんの個性が競い合うことで、新日本プロレスのクオリティが向上して、それが世界の観客を喜ばせることにつながるということなんだ。もちろん、その中でもケニー・オメガが最高の存在だと思っているけど、俺は棚橋サンみたいに他の選手やスタイルを見下したりはしないよ。

RECOMMENDEDおすすめの記事


RELATED関連する記事

MOST VIEWED人気の記事

Current ISSUE