ローリングストーン誌が選ぶ「2018年ホラー映画」トップ10

9位『サスペリア
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今回のセレクションの中で、もっとも賛否両論分かれた作品。ここ10年ホラー映画のリメイクには事欠かないが、その中でもとくに興味深い部類に入る。『君の名前で僕を呼んで』のルカ・グァダニーノ監督が、涼風の吹くイタリアの夏の海岸から一転、1977年の冬の時代のベルリンへ舞台を変え、ダリオ・アルジェントの傑作を独自の視点で切り取った。物語の設定はオリジナルと同じ――ダンス養成所、純粋無垢な少女、魔女の集会――そこにいくつか追加と修正が加わった。だが、オリジナルの雰囲気は健在。ヒロイン(ダコタ・ジョンソン)の周りで全てが音を絶えって崩れ落ち、ティルダ・スウィントンが物々しい雰囲気を漂わせる。人間の身体が、本来あるべき方向とは違う方向へ曲がってゆく感覚に襲われる。クライマックスもしかり、全てが赤で染められ、カオスが全てを支配する。こんなに美しく華美な映画が、これほど過小評価されるのも珍しい。
※日本では、2019年1月25日より全国公開予定


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チャールズ・マンソン級のカルトホラー!巨漢のヒッピー連中によるチェーンソー対決!『ヘルレイザー』の低予算リメイクから飛び出してきたような、地獄のバイカー!パノス・コスマトス監督の超絶次世代カルトムービーは、前半は過去の名作ホラーをずらり並べたミュージアムのよう。70年代の狂乱の時代に始まって、アングラB級ものまで勢ぞろい。そこへニコラス・ケイジが登場し、血しぶきをしたたらせるヒーローが復讐へと向かう後半戦が幕を挙げると、観客の予想はことごとく裏切られる。今年、これほど胃酸が逆流するような感覚を味合わせてくれた映画は他にあっただろうか?名優ケイジの「檻に囚われた怒り」の錯乱ぶりを、これほど間近で見せてくれた映画はあっただろうか?ラリった状態で味わう恐怖は、きっとこんな感じだろう。
※日本では、一部の地域で公開中
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コレリー・ファルジャのちょい悪デビュー作は、ラス・メイヤーの『ファスター・プシィキャット!キル!キル!』とアベル・フェラーラの『Ms.45』の間に挟まれて、古き良き三本立てホラーショウの仲間入りを果たすだろう。もっとも、「レイプの復讐劇」とうたわれる今回のフランス映画に比べたら、『Ms.45』など可愛いものだ。1人のビジネスマン(ケビン・ヤンセンス)が愛人(マチルダ・ルッツ)を連れて、羽目を外した週末旅行へ向かう。そこへ彼の仲間が早々に現れ、女を凌辱。3人の男どもは彼女を死んだと思い込み、砂漠に置き去りにする。ただし、このヒロインはこのまま闇に紛れて泣き寝入りなどしない。なぜなら、狩らねばならないゲスの極みどもがいるから。もしアカデミー賞が血で血を洗うホラー映画に贈られるのならば、この作品はオスカー像を総なめするだろう。どの世代にも『悪魔のえじき』的な作品が存在する。我々にとっては、この作品がまさにそう。
※日本公開終了

Translated by Akiko Kato

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