ローリングストーン誌が選ぶ「ベスト・ミュージック・ビデオ」トップ10

6位:ドレイク「ゴッズ・プラン」

監督:カレーナ・エヴァンス
「ゴッズ・プラン」でラップスターのドレイクはマイアミ市内を旅しながら、ビデオの撮影用に充てられた予算100万ドルを、生活に困っている家族や食料品店の買い物客、奨学金を必要とする子供たちや女性支援センターに配って回った。これまで、意図的にビデオの撮影予算を膨らませたアーティストはいた。マンサンとローマン・コッポラ監督は、ロンドンの地下鉄の駅で「Taxloss」の撮影をしてひと騒動おこし、ブリンク182は「ザ・ロック・ショウ」で若者の乱痴気騒ぎに乱入した。だが「ゴッズ・プラン」の予算はこれをはるかに上回りながらも、最も慈悲あふれるものとなった。またこの作品はドレイクと、23歳のカレーナ・エヴァンスの初コラボーレション作品でもある。今年のトップクラスの才能の持ち主だ。2人のコンビは、さらに「ナイス・フォー・ホワット」「アイム・アプセット」「イン・マイ・フィーリングズ」でも引き継がれたが、YouTubeの閲覧件数で10億件を間近に控えているのは今のところ「ゴッズ・プラン」のみ。1人でやろうと思っても、そうそうできないことだ。E.D.

5位:ジェイ・ロック、ケンドリック・ラマー、フューチャー&ジェイムス・ブレイク「キングズ・デッド」

監督:デイヴ・フリー&ジャック・ベガート
樹のてっぺんからウォール街、観光客に純粋主義者――ジェイ・ロックのアルバム『Redemption』に収録されている三つ巴ソングのビデオは、楽曲同様いい意味でブッ飛んでいる。株式取引市場や紙吹雪の舞う理髪店という設定で、ロック、ケンドリック・ラマー、フューチャーの3人が代わる代わる、金、一夫多妻制の王室、そして「ロールスロイスを腕に巻いてやるよ」といった話をぶちまける。監視カメラの映像や被害者の視点で撮影された暴行シーンのバックに流れるジェイムス・ブレイクのサンプリングがなんとも不気味。そして文字通り屋根の上からがなり声をあげ、王者ケンドリックスは車の流れを交わす。映画版「La-Di-Da-Di-Da」と呼ぶにふさわしい。D.F.

4位:ハレイ・フォー・ザ・リフ・ラフ「Pa’lante」

監督:クリスティアン・メルカド・フィゲロア
2017年9月、ハリケーン・マリアがプエルトリコを直撃すると、甚大な被害とそれに続く人道危機が訪れた。死者の数は2975人(ハーバードの調査によれば5000人近いともいわれる)。ハレイ・フォー・ザ・リフ・ラフのアリンダ・リー・セガーラと監督のクリスティアン・メルカド・フィゲロアは、自分たちの思いを表現する方法を模索していた。そして互いに連絡を取り合ううち、やがて「Pa’lante」のコンセプトに行き着いた。メラ・マーダーとカリーム・サヴィノンが演じる別れたカップルが、1600マイルの距離を超え、いまだ癒えぬ傷を抱えながら、再び歩み寄る姿が描かれる。フィゲロアはプエルトリコ育ち。この10年国内外を行き来していた彼は、久々に故郷へもどってビデオを撮影した。ハリケーン以降、足を踏み入れるのはこれが初めて。そこで彼が目にし、フィルムに収めた映像は、統計上の数字よりもはるかに切実に胸に訴える。最終的に「Pa’lante」は、相手にされないさみしさ、立ち直る強さ、そして別離の痛みを描いた美しい物語となった。何が起きたのか、そして今何が起きているのか、この先ずっと心に留めておかなくてはならない。

Translated by Akiko Kato

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