ローリングストーン誌が選ぶ「2018年ベスト・ジャズ・アルバム」トップ20

14位 カマシ・ワシントン『ヘヴン・アンド・アース』

2017年にEP『Harmony of Difference』をリリースして小休止したカマシ・ワシントンは、2015年にリリースしたフルレングスのヒットアルバム『The Epic』のスプロールへと戻ってきた。サプライズ・ボーナスディスク『The Choice』を含む3枚で構成された3時間以上の本作で、サクソフォニストのワシントンは、プラシッドなライト・ファンクからヴォコーダーを使ったラテン・ジャズまで彼の持つあらゆる音楽的要素を盛り込んでいる。ワシントンは壮大な野望を、湧き上がるインヴェンションとして長編作品の中に織り込んだ。オーケストラ的ファンタジー「The Space Traveler’s Lullaby」やコルトレーン版ゴスペル的な楽曲からは、彼がジャズ以外にも通じていることがよくわかる。



13位 ジョー・ロヴァーノ&デイヴ・ダグラス・サウンド・プリンツ『Scandal』

数十年に渡り偏狭なオブザーバーたちは、“ストレート・アヘッド”や“アヴァンギャルド”などとジャズを細分化し、時には正反対のジャンルを作ろうとしてきた。幸運にも、トランペッターのデイヴ・ダグラスやサックス奏者のジョー・ロヴァーノらエリート・ミュージシャンは、ジャンル分けには興味を持っていない。本作は、ウェイン・ショーターの決してジャンル分けされない美的センスにインスパイアされ、両者がコラボしたサウンド・プリンツ名義での2枚目の作品だ。ローレンス・フィールズ(P)、リンダ・メイ・ハン・オウ(Ba)、ジョーイ・バロン(Dr)の素晴らしいリズムセクションをフィーチャーしたクインテットは、ショーターによる60年代のブルーノートの代表作2曲をはじめ、各メンバーによる自由奔放なインプロヴィゼーションをじっくりと楽しませてくれる。『Scandal』は、偉大なプレイヤーたちがカテゴリーの垣根を取り払えば、ジャズとしてひとつになれることを示している。



12位 ハリエット・タブマン『The Terror End of Beauty』

『The Terror End of Beauty』をかけると、壁が汗をかくような気がする。ジャズに限らず、2018年にリリースされたアルバムの中で、これほど厚く包み込むような雰囲気を醸し出す作品は他にない。どっしりとして感傷的なサウンドは、長年に渡り共演を続けるブランドン・ロス(Gt)、メルヴィン・ギブス(Ba)、J・T・ルイス(Dr)のニューヨークで活動するパワー・トリオとプロデューサーのスコッティ・ハードの、シンパシーのある深いつながりを感じる。ダブのドリフト、フリージャズの情熱、ハードロックのパワーなど、数え切れぬほどさまざまな要素を採り入れながら、アルバム・タイトルに見られるように、アヴァンギャルドの偉大なギタリスト、ソニー・シャーロックなど、トリオが影響を受けた先駆者たちへの敬意を払うと同時にレガシーをさらに拡大している。本作を、ジャズ・レコードと呼んだり特定のスタイルに分類するのは安直だ。ずっしりと重いモンスター・アルバムと呼ぶべきだろう。



11位 ジェームズ・ブランドン・ルイス、チャド・テイラー『Radiant Imprints』

パーカッショニストのチャド・テイラーとサックス奏者のジェームズ・ブランドン・ルイスのデュオは、ジョン・コルトレーンの名作『インプレッションズ』の作曲法や1967年の伝説的な『Interstellar Space』のテナードラムのフォーマットなど、コルトレーンからの明確なインスピレーションを形にした。しかし類似点はそこまでで、2人は荒々しいフリージャズよりもアップテンポのビバップに近い、力強く疾走するスウィングを得意とする。「First Born」のような楽曲でテイラーは、トラップセットをムビラに置き換え、穏やかで空想的なサックスのメロディに透明感のある音を加えた。ジャズに限らず、コルトレーンのトリビュート作品は無数に存在する。本作は、ありふれたトリビュート作品とは異なり、高度に進化した斬新な手法を採り入れたレアな作品だ。


Translated by Smokva Tokyo

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