女性から性転換した男性、米史上初プロボクサーとしてデビュー戦勝利

親指の負傷により、マニュエルのプロボクサーとしての強い願望に一時期待ったがかかったが、けがが完治した彼は試合の機会を探し続けた。そんなマニュエルの話を聞いたのがオスカー・デ・ラ・ホーヤが所属するゴールデン・ボーイのプロモーターで、特に社長のエリック・ゴメスがマニュエルに興味を示したのだった。

ゴメスがロサンゼルス・タイムス紙に語ったところによると、彼はマニュエルに門戸を開いて、試合ができるプラットフォームを与えられる地位にいた。

「とても刺激を受けたね」とゴメス。「これはボクシングの試合以上に意味のある大きなことだ。ボクシングは非常にタフなスポーツだが、そこにパットが生きてきた人生の大変さを加えたら、想像を絶する状態だ。心の中の葛藤や肉体の転換の苦痛を考えたら、その後にそれでも試合をしたいと思うのか?

「その強い意志に感動したんだ。彼は私がこれまで会ったどのアスリートとも違う。この仕事を20年続けている私がそう思うんだからすごいよ」と。

アマチュアとして試合に出場する資格を得るのは複雑だったが、マニュエルはそのチャンスを得た。これにはブラジルのリオデジャネイロで行われた2016年のオリンピックを前に、米国ボクシング連盟が施行した新たな方針が有利に働いたのだった。国際オリンピック委員会が、女性から男性へと性転換した(FTM)アスリートは「制限なし」に試合に参加できるようにすべしと決定したことを受け、アメリカ国内でアマチュアの試合を運営管理する運営組織がマニュエルにカリフォルニア州で試合に参加できる資格を与えたのである。

しかし、このルールはプロの資格には適用されない。そのため、マニュエルがプロに転向する決断をしたとき、CSACは独自の判断を下す必要に駆られた。ところが、このCSACはアメリカ国内でも最も進歩的な団体で、マニュエルがFTMアスリート専用のプロ資格ガイダンスに従えば、試合への出場を認めると判断した。

ローリングストーン誌が入手したCSACの声明によると、マニュエルは素直にガイダンスに従ったという。

そして、「マニュエルは資格取得の条件を満たしており、カリフォルニアが認可したイベントで試合を行えるだけの実力を備えている」と声明に書かれていた。

マニュエルのプロデビュー戦はカリフォリニア州インディオで12月9日に行われた。対戦相手は勝ち星のないヒューゴ・アギラーで、マニュエルは4ラウンドを終えたところで全員一致の判定勝ちとなった。

この試合を見ていた観客はマニュエルの勝利パフォーマンスに複雑な反応を見せていたが、それでもマニュエルは喜びを隠さなかった。リングの中で、彼はこれまで受けてきた数々の憎しみについて語り、今の自分には克服すべき障害は一切ないと明言した。

「俺は黒人のトランス男だ」とマニュエル。「俺は残酷で憎しみに溢れた言葉を容赦なく投げつける人々の中で生きてきた。俺にブーイングする連中。それは俺じゃなくて連中の問題だ。連中は俺のことを知らない。俺が克服してきたことが何か知らない。俺がこのスポーツをどれだけ愛しているか知らない。やっているときの俺の幸せを知らない。そんな人生に怒りを覚えることすら連中の思う壺だから、俺は絶対にしない」。

33歳でデビュー戦のプロボクサーのマニュエルが、トップクラスのボクサーになるのは簡単ではない。しかし、それでも彼は挑戦し続ける。そしてリングで最高のボクサーになろうとしている。

「これは1回だけの試合じゃないし、宣伝のためのスタントでもない」と言って、マニュエルが続けた。「これは俺が愛してやまないことで、俺の人生を全部注ぎ込んできたことだ。俺自身をすべて犠牲にして得たものだ。そして、これはほんの始まりに過ぎないんだ」と。



Translated by Miki Nakayama

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