SKY-HIのライブに見た「越境者」の姿

SKY-HI(Photo by 畑 聡)

SKY-HIは「越境者」だ。彼のことをよく知らない人もAAAという男女6人組のスーパーパフォーマンスグループことは知っている。そしてそのメンバーの一人が彼だということがわかると、あるものは急に色めき立ち、またある者は急に興味を失う。そういう偏見を彼は越境しようとしている。彼のソロ活動は、(ラッパーとしては当然だが)社会の矛盾、政治のヤバさ、時には宗教についても謳う。しかも、メジャーレーベルにいながら。そのアティテュードは完全に「越境者」だ。

12月11日、会場の東京・豊洲PITに入ると前回のツアー同様、ジョージとホワイトというDJが喋りながら曲をかける架空のラジオ番組『Radio Marble』が流れていた。この日、12月11日はニューアルバム『JAPRISON』の店着日ということで『JAPRISON』の曲が『Radio Marble』で紹介され、オーディエンスのテンションを上げていく。そして定刻を少し過ぎ『Radio Marble』が終了し、バックバンドであるTHE SUPER FLYERSと共にSKY-HIがステージに上がりライブがスタートした。

1曲目の「FREE TOKYO」から5曲目の「何様」までハードなラップ曲を立て続けに披露した。2018年前半に開催された「SKY-HI TOUR 2018-Marble the World-」はダンスや芝居的な要素も入れたエンターテインメント性が高いステージだったが、今回はいきなりラッパーとしてのスキルを全開で披露。sleepyheadをゲストに迎えた「123for hype sex heaven」の後、長めのMCを挟み11曲目の「Stray Cat」からセカンドパートに突入。「Stray Cat」ではエレピの弾き語りで伸びのあるヴォーカルを聴かせた。次の「Bitter Dream」ではアコギで弾き語りを披露。コンポーザーでもある彼は、プレイヤーという領域をも超えてみせた。

ここまでも十分に気合の入ったステージだったが、振り返るとそこも準備運動のようだったように思う。13曲目の「Limo」のアウトロで暗転し、何かがステージに運びこまれている。明るくなると同時に「illusions」の演奏が始まる。ステージには彼とドラムを叩く金子ノブアキの二人だけ。この二人で奏でた「illusions」が素晴らしい。金子の鋭いドラムと、彼の切れのあるラップが溶け合い、ヤバイほどの破壊力で迫ってきた。


Photo by 畑 聡

そして次の「Gemstone」からMIYAVIが加わった。圧倒的なギタープレイで世界中のオーディエンスを熱狂させてきたMIYAVIが加わり、3人のプレイ。「Gemstone」に続いてはフリースタイルでのラップ。ルールを決めず言葉を紡ぐフリースタイルこそ「越境」を体現した表現だ。しかも、金子ノブアキとMIYAVIという一流のプレイヤーの奏でる音に呼ばて吐き出されたラップはおそらく本人も驚くほどの出来だったと思う。言葉に羽が生えたように自由で、それでいて言葉の一つひとつが耳と心に刺さってきた。

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