マットレスの「きしむ音」を表現したサンプリングが世界中を虜に

コロンビア出身の歌手、カロル・G(Photo by Ethan Miller/Getty Images for LARAS)

2018年5月にコロンビア出身の歌手カロル・Gがリリースした「Mi Cama」は、二股を掛けていたボーイフレンドのことを歌ったシングルだ。「私のベッドの音と……あなたの記憶が消えていく」とカロル・Gがスペイン語で言うように、ベッドのマットレスがきしむ音を連想させる効果音が使われている。

11月初めには、歌詞の内容はまったく異なっているものの、非常によく似たサンプリング音源が韓国のポップグループEXOの「Tempo」で再登場した。「おれのテンポを狂わせないでくれ」という歌詞をより含みのある内容にしている。

「Mi Cama」と「Tempo」はどちらも大ヒット曲である。「Mi Cama」は様々な国の音楽チャートでトップ10入りを果たすとともに、YouTubeで6億近い視聴回数(リミックスを含む)を記録した。「Tempo」はYouTubeのグローバルチャートの5位にランクインし、韓国では4週連続でシングルチャート1位を獲得した。実は、この効果音にはアメリカのヒップホップとR&Bにおける短いながらも極めて重要な歴史が隠されているのだ。



まず、この効果音について知っておかなければいけないことがある。それは、本当はマットレスのスプリングの音でもなければ、サンプリング音源でもないかもしれない、という事実だ。この音がヒップホップで初めて使われた例としてもっとも頻繁に取り上げられるのが、リル・ジョンがプロデュースした2004年のクランクを代表するトリルヴィルの「Some Cut」だ。「スタジオで、ギタリストのクレッグ・ラヴとベーシストのル・マークイス・ジェファーソンと一緒にビートを作ってたんだ」ジョンは振り返った。「ビートを作りながら、おれがロッキングチェアに座りながら前後に揺れてると、クレッグが『いまの聴いた?』って突然言うんだ。『何をだよ?』『ロッキングチェアがビートに合わせてキコキコいってる!』『まじかよ!』ってことになって、さっそく椅子にマイクを近づけた。おれがヘッドフォンをつけて、椅子を前後に揺らしながらその音を録音して、トラックに入れたんだ」



トリルヴィルが「Some Cut」のミュージックビデオを公開すると、ラッパーたちは効果音の出所をめぐってああでもない、こうでもない、と議論を展開した。ビデオの最初のシーンでは、マットレスの動きに合わせてバネが伸び縮みする様子が映し出される。あとに続くきわどい歌詞が、セックスを連想させリスナーを刺激。「Some Cut」は2004年の音楽チャート「ホット100」で14位にランクインした。

ケルソン・キャンプとティアラ・トーマスは、のちにワーレイの「Bad」として2013年に25位にランクインを果たす楽曲に取り組みはじめた頃、トリルヴィルの「キコキコ」音を再現しようとしていた。

アトランティック・レコードが「Bad」を見出したとき、レコード会社はトリルヴィルのオリジナル音源の著作権料を支払うことを渋ったため、キャンプは独自でサウンドを作る必要があった。「ほんの一部の人しか知らないけど、その頃、ちょうどパソコンにマットレスの音が入った動画を自分で持っていたんだ」とキャンプは言った。「音声ファイルをチェックしていたときにこの『キコキコ』という音を見つけて、細かくカットしてみた」

不思議なことに、新しいマットレスの音の出所として自らの性生活を引っ張ってきたと主張するプロデューサーはキャンプだけではない。「Bad」の翌年、タイ・ダラー・サインがリリースした「Or Nah」はアメリカで400万枚を売り上げた。堂々としたセックス指南書とも呼べるこのシングルでは、「Some Cut」と非常によく似た効果音が使用されていた。キャンプは、自らの「キコキコ」動画からサンプリングした音源を使用したかもしれない、と考えている。「『Or Nah』のキコキコ音はずっと低くてフィルターもかかっている。トップの部分はロールオフされているけど、俺の音源とよく似ている」とキャンプは言った。

Translated by Shoko Natori

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