マットレスの「きしむ音」を表現したサンプリングが世界中を虜に

コロンビア出身の歌手、カロル・G(Photo by Ethan Miller/Getty Images for LARAS)



しかし、「Or Nah」のプロデューサーのひとりであるマイク・フリーは「Some Cut」のサンプリング音源も「Bad」の効果音も使用していない、と主張する。キャンプのように、フリーも独自の音を見つけてきたと言う。「個人的な動画から録音したもの」とフリーは述べた。

「Some Cut」のマットレスのバネの音はいたるところに現れる。プロデューサーのナッシュ・Bもまた、Jacqueesの「B.E.D.」のリミックスにおいて、エクスタシーあふれるハーモニーが印象的なアウトロにバネの効果音を重ねている(オリジナルバージョンにはバネの効果音は入っていない)。「楽曲にプラスするには最高の要素だ」とナッシュ・Bは言う。ブルーノ・マーズだってそうだ。サンプリング音源は正式にクレジットされていないものの、「That’s What I Like」のインストゥルメンタル版を聴くと、きしむ音が聴こえるとキャンプは指摘した。



さらには、ティナーシェの「Ooh La La」のプロデューサーであるJ・ホワイトも「Some Cut」の影響を認めている。「そのころは誰もがリル・ジョンに夢中だった」とカーディ・Bの「Bodak Yellow」のプロデューサーとして知られるJ・ホワイトは言った。「ワーレイの曲でマットレスのバネの音を聴いたんだ。耳障りなのに不思議と魅了されたから、この音を復活させようって思った」。そしてJ・ホワイトはオンラインのサンプリングパックからこの音を手に入れた。「俺のベッドはきしまないんだ」と冗談っぽく言った。「でも、この音には楽曲全体を特徴づける何かがある」

K-POPがアメリカのヒップホップとR&Bから大きな影響を受けていることを考えると、マットレスのバネの音がはるか韓国まで渡ったことは決して意外ではない。アメリカのキコキコ音をアジア市場に輸出したことには、K-POPに数多くの楽曲を提供してきたジャミル・チャマス(カリードのポップラジオヒット曲「Love Lies」はアメリカでもヒットした)の影響もある。2014年ごろにこの音の普遍性に気づいたチャマスは、オンラインバージョンを探して、自らの必殺技のひとつに加えたのだ。「よく聴こえるように、音を調整したんだ。今ではたくさんの人がこの音をサンプリングするので、ごちゃ混ぜになっているけど」とチャマスは言った。

チャマスがこの音をK-POPに導入した理由は「新しかったから」だ。この音はNCT 127の「Baby Don’t Like It」、EXOの「They Never Know」、SHINeeの「Prism」など、チャマスが関わっているすべての楽曲に含まれている。さらには、EXOの「Tempo」ではクレジットにも名前が記載されている。「もっと盛り上げたい部分が楽曲にあれば、キコキコ音を入れるだけで不思議といい感じになる」とチャマスは言った。

カロル・Gの音の出所はさらに意外である。シングルのプロデューサーであるアンディー・クレイは「Some Cut」へのオマージュではなく、伝統的なレゲトンの雰囲気を作り出そうとしたのだ。マドリードでのデモセッション中、クレイとともにプロデューサーを務めたライートとソングライターのオマール・クーンズはNative Instrumentsというオーディオ プロダクション プログラムに収録されている8627のサンプル音源からたまたまこの「キコキコ」音に出会ったのだ。のちにクレイは出来上がった曲をバチャータ歌手のプリンス・ロイスに聴かせると、ロイスはカロル・Gを強く推薦した。

14年前にアトランタのプロデューサーが世に送り出したキコキコ音がなぜソウル、マドリード、さらにはコロンビアのメデジンにまで広がったかについてクレイは見解を述べた。「中国語、スペイン語、英語などの言語を超えて私たちはベッドの音の意味を理解する。でもそれだけじゃない、その音には世界共通のユーモアがあるんだ」とクレイは言った。



Translated by Shoko Natori

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