英国出身のクリーン・バンディットが京都に魅せられる理由

─しかも今作は、いろんな国でレコーディングしたそうですね。中にはウガンダのあるバスルームでレコーディングした部分もあるとか。

グレース:あはは! そうなの。「Beautifu」という曲では、ラヴ・サガ(現在はソロで活動している元オリジナル・メンバー)に参加してもらったんだけど、彼に歌ってもらった歌詞の中で1ラインだけ、どうしても後から書き換えたくなって。そこを歌い直してもらえないか相談しようと連絡したところ、ちょうど彼はウガンダにいたの。録音機材も何もなかったから、スマホか何かに録音したものを送ってもらった。なので、本当にバスルームなのかどうかは定かではないんだけど、おそらく家の中で一番声が響くところといえばバスルームだから、きっとそこで録ったんだろうねってみんなで話していたのよ(笑)。

─そういうことだったんですね(笑)。この曲はナイジェリアのシンガー、ダヴィドもフィーチャーされていますよね。

ジャック:彼の声を入れるのも大変だった。今、ロンドンではナイジェリアの音楽が流行っているのもあって、彼はレコーディングでも引っ張りだこでさ。ちょうど他のアーティストのレコーディングでロンドンに来ていて、どうにか歌録りの時間をもらえることになったんだ。で、真夜中に指定されたスタジオへ行ったら長蛇の列ができていて。そう、みんな彼の声をもらいに来てたんだよ(笑)。

グレース:私もルークもすでに各々の寝室でくつろいでいたから、「そんなに時間がかかるならもう、帰ってきたら?」ってジャックにメールしたんだけど、朝の5時まで粘ってようやく録ってもらえたんだって(笑)。

─そんな貴重なテイクだったんですね。

ジャック:何しろ3年がかりで作ったから、本当にいろんな思い出があるよ。ジュリア・マイケルズが参加してくれた「I Miss You」もすごかった。トラックはすでに完成していて、そこにジュリアの考えたメロディを乗せてもらうことになっていたんだけど、案の定何も準備せずに現れたんだ(笑)。

なので、まず30分くらいおしゃべりしながら「こんな感じの曲」ってピアノで聞かせて。それで録音ブースに入ってもらったんだけど、曲の頭から徐々にメロディを作り上げ、45分後にはメロディも完成し歌いこなせるようになってたんだよ。そのプロセスをずっと録音していたのだけど、なぜ彼女がそういうやり方でレコーディングを行ったのか、最後のテイクを聴いたときに全て察したんだ。その場で作り上げたメロディを、全く直しを入れずに歌いきったテイクが出来上がったからね。ものすごく貴重な場面に立ち会うことが出来たなって今でも思うよ。

グレース:たった45分でメロディを仕上げちゃうなんてすごい!って私たちは思ったんだけど、ジュリアン曰く「ジャスティン・ビーバーに提供した曲は28分で作れたわ」って(笑)。

ジャック:ショーン・ポールも、その場でメロを作り上げてヴォーカル・テイクを仕上げてしまう才人だよ。僕の知る限りでは、彼とジュリアンくらいだね、そんなやり方をしているのは。まるで鍾乳洞みたいというか、ポタポタとしたたる水滴が、気がついたら鍾乳石の形を大きく変えてしまうのに似ているなって思う。

─とてもユニークな喩えです。そろそろ時間なので最後の質問なのですが、クリーン・バンディッツは兄弟2人と女性1人という、とてもユニークな編成ですよね。結成して来年で10年ですが、お互いの関係って変化してきました?

ジャック:確かに、この10年で変わったと思う。ようやく落ち着いてきたというか、ファミリー感が出てきたな。一緒にいて楽しいしリラックスできるし、今回も新幹線でメンバーやスタッフみんなでコーヒー飲みながら話していて、「ああ、こういう環境がずっと続いているのって素晴らしいなあ」としみじみ思っていたところだったんだ。

ルーク:バンドといっても、結局のところ僕らは3人だけでなくスタッフやセッション・ミュージシャン、みんなで成り立っているからね。それがありがたいことだと若い頃よりも理解しているし、ほんと、収まるべきところに納まったって感じがする。

グレース:私たちって親同士も仲が良くて、それもいい影響を与えているな。実は、最初に私たちが日本に来たのは今から12年前、まだバンドも結成してなくて、ジャック達の両親と、うちの両親も含めた家族旅行という感じだったの。東京、京都、宮島、広島と回ったのかな。それがきっかけで、私たちは日本が大好きになった。なのでクリーン・バンディットは、バンドとスタッフ、さらには家族も含めた「大きなファミリー」だと思っているわ。


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