ローリングストーン誌が選ぶ「2018年ベスト・アルバム」トップ50

25位 レイ・シュリマー『SR3MM』
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2018年は長尺のアルバムが歓迎されない傾向があったが、ミシシッピ出身の双子デュオ、レイ・シュリマーは与えられたスペースを誰よりもふんだんに活用してみせた。101分に及ぶサイケデリックなトラップミュージックから感じられるその野心は、サザンラップ界の帝王アウトキャストを彷彿とさせる。ランボルギーニをテーマにした「Powerglide」や、喜びと悲しみが同居する「Hurt to Look」等、Swae LeeとSlim Jxmmiの兄弟は、その名を知らしめた初期のポップ・ラップが宿した若さゆえのエネルギーを保ったまま、広がり続ける音楽的好奇心を作品に反映させてみせた。

24位 カリ・ウチス『Isolation』
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コロンビアにルーツを持つポップ界の新星、カリ・ウチスの快活なデビュー作は初期のベックを彷彿とさせる。持ち前のヒップホップ・ソウル的グルーヴ感を存分に発揮した「Your Teeth in My Neck」、ブラジル音楽やレゲトン、ファンク、ドゥーワップ等の要素が溶け合う「Miami」など、あらゆる曲に彼女のカリスマ性がはっきりと滲み出ている。「キムになろうなんて思わない だって私はカニエになれるんだもの / ヤシの木とチャンスに囲まれたこの街なら」その言葉に異論を唱える者は多くないだろう。

23位 USガールズ『In a Poem Unlimited』
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メグ・レミーの6枚目のスタジオアルバムは、2018年において最も政治的メッセージ性に富んだ作品のひとつだった。インテリジェントでボーダレスな同作は、性急なサックスやトリッピーなギターリフ等、アシッド・ファンクからレトロなディスコまでの影響を感じさせる。「Rage of Plastics」は、まるでカレン・シルクウッドによるスクリーミング・ジェイ・ホーキンスのカヴァーのようだ。「M.A.H.」では70年代調のディスコビートに合わせ、救いのない結婚生活(とオバマ政権下における幻想)について洞察する。自己発見の喜びを歌ったトリップホップ調の「Rosebud」は『市民ケーン』を思わせ、突然変異のクラブアンセム「Incidental Boogie」では家庭内暴力の被害者の心理を描いてみせる。確固たる意志とヴィジョンを持ったフェミニストたちが立ち上がる現在、もはや現実逃避は許されない。

22位 ジョン・プライン『The Tree of Forgiveness』
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自身がファンであることを公言しているディランを除けば、ジョン・プラインはアメリカでも随一のキャリアを誇るシンガーソングライターだ。カントリー/アメリカーナ界の大御所デイヴ・コブがプロデュースを手がけ、オリジナル作としては約10年ぶりとなった今作で、プラインは改めてその才能を見せつけた。愛する者の帰りを待つ切なさを歌った「Summer’s End」や、現在の社会情勢の風刺ともとれる率直な「Caravan on Fools」等、アルバム全編にわたってその堂々たるテナーボイスが響き渡る。感傷的で諦念に満ちた「When I Get to Heaven」では、死後の世界に思いを馳せている。彼がその地へ行くのはまだまだ先であると信じたい。

Translated by Masaaki Yoshida

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