ローリングストーン誌が選ぶ「2018年ベスト・アルバム」トップ50

21位 ビーチ・ハウス「7」
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ウォームでファジーなドリーム・ポップを信条とするバルチモア出身のビーチ・ハウスは、新鮮なアイディアによって自らを生まれ変わらせた。ドラムやシンセを従来よりも大々的にフィーチャーした7枚目のアルバムは、過去に送り出した全アルバムが本作への布石だったと思わせるほどの完成度を誇っている。アルバムにおけるハイライトでありサイケデリックな輝きを放つ先行シングル「Lemon Tree」、無限に続く無重力空間をイメージさせる「Lose Your Smile」や「Pay No Mind」等、その楽曲にはまさに唯一無二の魅力がある。長くキャリアを積んできたバンドは保守的になりがちだが、彼らは勇気と才能をもって自らの殻を破ってみせた。

20位 ザ・ベスズ『Future Me Hates Me』
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ニュージーランド出身のザ・ベスズは、60年代のヒッピー文化を思わせるメロディーと90年代のファズギターを融合させてみせる。彼らのデビューアルバムは、ニュー・ポルノグラファーズの『マス・ロマンティック』やザット・ドッグの『リトリート・フロム・ザ・サン』と肩を並べる、インディー・パワーポップの傑作だ。 メインのソングライターを務めるエリザベス・ストークによる歌詞は恋愛観、不安、自己発見といったテーマを扱っているが、そのキャラクターは「私のことをよく知れば、きっとあなたは私のことを嫌いになる」という切ない内容に、本屋の会計待ちの列で思わず口ずさんでしまうようなカジュアルさをもたらしている。オルタナ・ロック界に現れた新星は本作で、この上ないキャリアのスタートを切ってみせた。

19位 ホップ・アロング『Bark Your Head Off Dog』
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2015年発表の秀作『Painted Shut』に続く本作で、フィラデルフィア出身の彼らは過去と決別し、名実ともに大きな進化を遂げてみせた。『Bark Your Head Off Dog』では、「How You Got Your Limp」における酔っ払った教授、「One That Suits Me」に登場する狂気にとりつかれた将校、そして「Somewhere a Judge」におけるいい加減な判決まで、奇妙かつヴィヴィッドなキャラクターやシーンが次々と描かれる。 Frances Quinlanが繰り返し口にする「奇妙なやつらが舵を取るという不思議」というフレーズは、今年最も印象的だったもののひとつだ。万華鏡のようなポップから嵐を思わせるフォークまで、複雑な世界観の核となるのは圧倒的な演奏技術だ。聞くたびに新たな発見のある、スルメのように味わい深いアルバムだ。

Translated by Masaaki Yoshida

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