サウス・ロンドンの歌姫、ジョルジャ・スミスは、何故ドレイク、ケンドリック・ラマーから相次いでフックアップされたのか?

ジョルジャ・スミス(Photo by Joseph Okpako/WireImage)

英国R&Bシンガーが世界を席巻する時代――その代表格として多くの人が名前を挙げるだろうアーティストの一人が、現在はサウス・ロンドンに拠点を置くジョルジャ・スミスだ。

彼女の名前が広く世に知られるきっかけとなったのが、ドレイクが2017年に発表したプレイリスト『モア・ライフ』。南アフリカのDJであるブラックコーヒーやUKグライム勢など、フレッシュな才能を数多く世界のメインストリームに向けて紹介した同作に、スミスは2曲で参加。そして、ケンドリック・ラマーがキュレーターを務め、今年2018年初頭に送り出された映画『ブラックパンサー』のサウンドトラックである『ブラックパンサー ザ・アルバム』にも名を連ねている。ドレイクとケンドリック・ラマー、今の北米メインストリームの二大巨頭と言っても過言ではない大物たちから相次いでフックアップされたのが、この21歳のイギリス人シンガーということだ。

Black Coffee and Jorja Smith - Get It Together Ibiza Sunset 2017 Radio 1



彼女がドレイクの目に留まるきっかけになった名曲であり、アーティストとして初めて世に送り出した楽曲でもあるのが「Blue Lights」。UKグライムのパイオニアの一人、ディジー・ラスカル「サイレンズ」をサンプリングし、(黒人が)警察から言われもない職務質問を受ける様子を描写したこの曲が完成するまでの背景を、ローリングストーン誌はこのように伝えている。

「17歳、(音楽の奨学金で入学した高校の授業で)メディアでの白人優遇に関するプロジェクトを与えられたときのことだ。プロジェクトの一環として、彼女は学校中を駆け回り、若者たちに警察に対する印象を聞いて回った。黒人の生徒たちは、自分たちが人種差別を受けていると答えた。『11歳の子どもが、「政府なんかくそくらえ! あんなヤツら大っ嫌いだ。俺たちは何もしてないのに、ヤツらに追いかけまわされるんだ」って言うのよ。そんな話ばかりだった』

「彼女は、友人の一人が自分の家の前にナイフの入ったバッグを置いたために、無実の罪を着せられる姿を想像してみた。あるいは『友人がちょっとしたことで誰かを刺して、自分のところに駆け込んできた。自分はただ、彼をトラブルから守ろうとしただけなのに』というシチュエーションを想像してみた。そこから徐々に、一つの曲が姿を現し始めた。職務質問をやんわり、だがきっぱり拒絶する“Blue Lights”は、Soundcloudでたちまち話題となった」

Jorja Smith - Blue Lights



この曲を聴いたドレイクは、Twitterのダイレクト・メールで彼女に連絡を取ってきたという。そこからの快進撃は前述の通りだ。スミスはドレイクの『モア・ライフ』、ケンドリック・ラマーがキュレーションした『ブラックパンサー ザ・アルバム』といったビッグ・プロジェクトに次々と参加。ドレイクのみならず、ケンドリックからも仕事のオファーが舞い込んできときの驚きについては、「私が知らないと思って、Instagramでからかってるんじゃないの?ってね」とローリングストーン誌の取材で笑いながら話している。

2018年6月にリリースされたデビューアルバム『ロスト・アンド・ファウンド』は全英トップ3、全米でも41位を記録した。エラ・メイという例外を除けば、イギリスの女性R&Bシンガーのデビュー作では異例の成功と言っていいだろう。そして、ローリングストーン誌曰く、本作は「魅惑的なヒップホップ・ソウルの親密感と鳥肌もののヴォーカルで、音楽評論家から大絶賛されている」。

商業的な成功とアーティスティックな評価を両立し、まさに今、躍進の真っ只中にいるスミス。彼女は将来の目標をこのように語っている。

「リアーナと仕事がしたいな。まだ会ったことはないけどね。もしかしたら、彼女は私のこと知らないふりをしているだけかも。でも絶対、私のこと知ってると思う」

Edit by The Sign Magazine

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