2018年、メインストリームのロックはなぜ退屈だったのか?

ビルボードのMainstream Rock Songsチャートの焦点は伝統的なロックのはずだが、そのトップ10は同ジャンル全体を対象にしたチャート以上に均質化されてしまっている。そこに名を連ねるアーティストたちが歌う内容は、揃いも揃って退屈なものばかりだ。外界に対する憤りと憎しみを叫ぶニュー・メタル界の重鎮ゴッドスマックのナンバーワンヒット曲「Bulletproof」、自殺願望と恨み節を綴ったバッドフラワーの「ゴースト」、名前からして世界に喧嘩を売ろうとしているファイブ・フィンガー・デス・パンチ等、その枚挙にはいとまがない。言うまでもなく、そういったバンドの音楽性はどれも陳腐で月並みだ。筆者が子供の頃に親しんだコロラドのロック系ラジオ局では、現在もホワイト・ゾンビやピンク・フロイド、そしてパパ・ローチといったバンドが頻繁にエアプレイされている。

最近ではハードロック系ラジオ局で、ニルヴァーナやリンキン・パークがヘビーローテーションされるという現象も起きている。カート・コバーン以降、星の数ほどのシンガーたちが自身の脆い内面を歌にしてきたが、マイク・シノダ率いるリンキン・パークは15年前に、キラキラのトーンに乗せたラップで悲しみを表現するというスタイルを確立してみせた。コピーキャットのコピーが現れるという現象は同分野でも続いているが、メインストリームのロックにおける状況はさらに深刻だ。

インターネットの普及によってあらゆる楽曲へのアクセスが容易になった現在、人々の支持を集める曲、つまりチャートの上位に登場する曲は、ロックの伝統に倣っているかどうかではなく、使い捨てのポップカルチャーのニーズを満たしているかどうかを示している。ニッチで個性的な曲がチャートの上位に食い込むことは稀であり、ロックではその傾向がヒップホップ等その他のジャンルよりも顕著となっている。その理由はロックのリスナー(特にメタルヘッズ)がシングルではなくアルバムを重視し、現在でもCD等のフィジカル版にこだわっているためだ。(今週のHot  Rock Songsチャートのトップ10にクイーンの曲5曲がランクインしていることは、他のジャンルに比べてロックのリスナーが歴史を重んじることを示している。その一方で、ザ・ストラッツやパニック!アット・ザ・ディスコ、そしてグレタ・ヴァン・フリート等がクイーンが用いたトリックを使ってヒットを飛ばしているという事実には首を傾げたくなる)

しかし興行の面では、ロックは依然として圧倒的な強さを誇っている。驚いたことに、過去数年間におけるコンサートの観客動員数でトップに立ったのはガンズ・アンド・ローゼズであり、メタリカやU2は現在でもスタジアムを満員にすることができる。しかしそれは、メインストリームのロックが圧倒的な人気を誇っていた時代に地位を確立したアーティストたちの話だ。現在脚光を浴びている若手バンドがどこまで上り詰めることができるかは見ものだが、グレタ・ヴァン・フリートも野心だけは抱えているようだ。



現在の状況が物語るのは、「ホット」で「フレッシュ」であるはずのメインストリームのロックは、もはや大衆の好みを反映するものではなくなったということだ。それはジャンルの細分化が進みすぎたことと関係している。サブジャンルを含めた広意義でのロックという観点から見れば、今年はむしろ豊作だったといえる。スリープ、デス・キャブ・フォー・キューティー、ナイン・インチ・ネイルズ、デフヘヴン、ブリーダーズ、ファンタスティック・ファーニチャー、ジューダス・プリースト、スーパーチャンク、ヘイルストーム、Lucius等、今年は数多くのバンドが優れた作品を発表した。またスネイル・メイル、ビッグ・ジョニー、ゴート・ガール等、優れた若手バンドたちがロックの未来を照らし出した。原型をとどめていない毛沢東のコピー写真のように、ロックとポップの境界線が曖昧となった現在のチャートやラジオでは、彼らの楽曲を耳にすることはできない。優れた音楽に出会うには、これまでよりも時間と手間をかけなくてはならないのだ。

Translated by Masaaki Yoshida

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