Spotify有料会員一人あたりの平均売上が下がっている理由

2018年、米ニューヨークで開催された「Z100's Jingle Ball 2018」に出演したカーディ・B。(Photo by Dia Dipasupil/Getty Images for iHeartMedia)

4年前と比べると、全世界の有料会員が1年間に支払う平均額は20ドル以上も減少。レーベル側は状況がさらに悪化するのではと懸念している。

表面的にみれば、ニューヨークに拠点を置くワーナー・ミュージック・グループ(WMG)にとっては朗報に違いない。音楽制作事業で世界第3位の同社が昨年9月末に発表した前年度決算は、創業以来最高の数字となった。

WMGの年間音楽制作収入は対前年比111%、3億4000万ドル増の33億6000万ドル――同社史上最高の業績をあげた。案の定、こうした成長を後押ししたのはSpotifyやApple Music、SoundCloud、Pandoraといったストリーミングサービスからの年間収入の急増である。昨年は17億3000万ドルに達した。この1年間ワーナーにとって稼ぎ頭となったのは、カーディ・Bやエド・シーラン、リル・ウージー・ヴァートといったスターたち、そしてベストセラーとなった『グレイテスト・ショーマン』のサントラなどだ。

にもかかわらず、12月20日にワーナーのスティーヴ・クーパーCEOがアナリストたちの前で業績発表した際、彼の口調は時折やや苛立ちがにじんでいた。

彼の頭を悩ませているのはARPU、すなわちユーザー1人あたりの平均単価(Average Revenue Per User)。つまり、Spotifyのようなプラットフォームで、有料ストリーミング会員としてユーザーが支払う平均価格のことだ。

「ARPUが下落傾向にある主な要因は、ファミリープランや、新興市場での意図的な低料金戦略にあります」。ワーナーの収支報告でクーパー氏はこう指摘した。「我々としては有料サービスのパートナー企業と協力して、こうした悩ましき動向に取り組んでゆく所存です」

SpotifyのARPUが落ち込んでいる件は、ここしばらく大手レーベルの悩みの種。2019年中に危機的状況を迎えるのはほぼ確実だ(理由については後述)。まずはこうした下落傾向をおさらいし、それが音楽ビジネスにどのような影響を及ぼしているのかを駆け足で見てみよう。

Spotifyがルクセンブルクで法人登記した際の提出書類をひもといてみると、2014年末の時点で――クーパーのいう「悩ましき動向」が起こる4年前――Spotify有料会員の平均支払額の全容が見えてくる。2014年末、Spotifyが全世界に抱える有料会員は1500万人。これにより、年間およそ9億8290万ドルの収入が同社にもたらされた。

2014年末の時点で、Spotify有料会員の平均支払額は年間65ユーロ53セント。当時の為替レートで換算すれば、USドルにして年間87ドル9セント、月間7ドル26セントに相当する。

この数字がSpotifyの有料会員の月額標準料金9ドル99セントと一致しないのはなぜか?クーパーもほのめかしていたように、諸般の事情で大手レーベルは苦渋をなめているのだ。

Translated by Akiko Kato

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