ルカ・グァダニーノ監督が語る『サスペリア』とトム・ヨーク、1977年のベルリンとボウイ

―1977年のベルリンといえばデヴィッド・ボウイが滞在していたことでも知られていますが、作中にボウイのポスターが一瞬出てきますね。

グァダニーノ:うん、オリヴィア・アンコーナが演じる登場人物(マルケータ)がボウイのファンという設定なんだよ。実は女の子たちがボウイのコンサートに行くというシーンも撮影したんだ。最終的に収録されなかったけど、“裏設定”としてボウイは作品内に存在するんだ。

―あなたはボウイの音楽のファンですか?

グァダニーノ:羞恥というものを知っている人間ならば、ボウイのファンでないなんて言うことは出来ない。彼の才能の前に頭を垂れるのみだ。 ボウイのように人間を超越した存在の偉大さに対して、私は疑問を抱くことなどない。

―音楽界でボウイ以外に“人間を超越した”アーティストを挙げるとしたら?

グァダニーノ:ケイト・ブッシュはその1人だろうね。

―『サスペリア』の音楽にトム・ヨークを起用した経緯を教えて下さい。

グァダニーノ:レディオヘッドは我々の世代において最も重要な音楽グループのひとつだ。トムはバンド外でも素晴らしい才能を発揮しているし、彼に頼むことは最も理性的な行為だった。彼とコンタクトを取って、数回会って、どんな音楽を作るか話し合った。類型的なホラー映画の音楽にはしたくなかったんだ。より独自性がある、トムのパーソナルな面が現れた音楽にしたかった。トムはもちろんダリオの『サスペリア』のファンだったし、話は早かった。あの映画は世界中、特にイギリスのミュージシャン達には多大な影響をおよぼしたんだ。

―もしトム・ヨークがやりたくないと言ったら、どうしていましたか?

グァダニーノ:おそらく既存の曲を使っていただろうね。シェーンベルクを使っていたかも知れない。幸いトムは快諾してくれたよ。



―あなたは仕事から疲れて帰ってきて、どんな音楽を聴きますか?

グァダニーノ:そういう時は音楽は聴かない。すぐにベッドに入って眠るよ。それから朝起きて、美しい1日が始まる。その日によって、聴く音楽は異なるんだ。最近聴いたのはジョン・アダムズだった。

―『胸騒ぎのシチリア』(グァダニーノ監督による2015年作)ではラルフ・ファインズがローリング・ストーンズの「エモーショナル・レスキュー」に合わせて踊るシーンが印象的ですが、どんな思いが込められているのでしょうか?

グァダニーノ:ローリング・ストーンズが退廃的だった時代のノスタルジアを表現したかった。でもありきたりのストーンズ・ナンバーは使いたくなかったし、彼らのポピュラーでない曲を使うことにしたんだ。『エモーショナル・レスキュー』はアルバムとしても決して愛されていないけれど、良い作品だと思うよ。

―あなたの次回作はボブ・ディランの『血の轍』を基にしたものになるのだそうですが、どのような映画になるでしょうか?

グァダニーノ:『血の轍』からインスピレーションを得た、独自のストーリーのある作品になる。ドキュメンタリーではないし、俳優がボブ・ディランを演じるわけではない。アメリカを題材にした映画をずっと作りたかったんだ。ディランの精神はアメリカに深く根差していると考えている。

―『君の名前で僕を呼んで』と『サスペリア』、そして『血の轍』には主題の連続性はあるでしょうか?

グァダニーノ:それは映画を見た皆さんがどう考えるか、だよね。どんな結論が導き出されるか、私自身興味がある。ぜひ『サスペリア』を見て、その答えを教えて欲しい。





『サスぺリア』

1月25日(金)TOHOシネマズ 日比谷ほか全国ロードショー
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監督:ルカ・グァダニーノ『君の名前で僕を呼んで』
音楽:トム・ヨーク(レディオヘッド)
出演:ダコタ・ジョンソン、ティルダ・スウィントン、ミア・ゴス、ルッツ・エバースドルフ、ジェシカ・ハーパー、クロエ・グレース・モレッツ

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