Facebook新方針、LGBTQ性教育者たちが感じる「排除」への危機感

この新方針がFacebook上で交わされるセックスに関する率直な会話に与える影響がどのようなものかを話し合う人々が多い一方で、身体障がい者のための体位ガイドや変態的性行為を安全に行うためのアドバイスといった、極めて重要なリソースサイトが将来的にブラックリストに入ってしまうことを心配する人々もいる。ソーシャル・ネットワーキングの出現以来、クイアな人々は仲間を見つけるプラットフォームとしてこれを活用しており、この新方針によってFacebookは彼らのコミュニティの存続を難しくする準備を進めたように見える。学校の性教育、人間関係カウンセリング・サービスなどのセックスが関連するリソースが対象とするのが、多くの場合、シスジェンダーでストレートの白人健常者のため、多様な(そして対立する)コミュニティに向けて発信するグループは、弱い者いじめが好きな人間にターゲットにされた時にサイトから追放される危険と常に隣り合わせだ。トランス女性を例に挙げると、彼女たちはトランス排除を願う「過激的な」フェミニストの攻撃の対象となり続けていた。そして、実際にトランス女性のサポートページは多数の虚偽通報で閉鎖に追い込まれている。こういったページの閉鎖による情報とコミュニティの消滅は、今後大きな影響をもたらす可能性がある。

今回の新方針で大きな影響を受けるのが性教育者で、特に性教育者自身も周縁化されていて、同業者や支持者とつながるためにFacebookに頼っていた人々だ。多くの性教育者にとってセックスに関するコツや秘訣が生活の糧を稼ぐための情報であり、主流メディアが主流のセクシュアリティ以外に対応しない場合、主流でないセクシュアリティの人間が頼るのはそういった性教育者となるわけだ。元セックスワーカーで現在はロマンス作家のケイティー・デ・ロングはその主張が安全なセックスの関する情報のことが多々あるのだが、ロングはこのような方針が行き着くところは非常に重要な交流の場の閉鎖だと警鐘を鳴らす。「実際の性欲の度合いを無視して、LGBTを本質的に性欲が強いと思いたがる傾向を社会の主流が持つため、広告に対する障害が急速に増えている状況だ。今回の新方針はそれをさらに悪化させて、私たちのコミュニティで使用されるセクシュアリティやアイデンティティーに関する言葉を使う人はすべて排除すると言っているようなもの」とロング。

また、この新方針によって周縁化された人々への支援や援助も減っていくことになるだろう。そういう人たちの多くが危険な状態に直面していたり、医療機関から無視されていたりする。「クイアの一人として、クイア研究や精神面のヘルスケアにプロとして打ち込んでいるグループと連携して活動することも困難になる。今までは研究の参加者を募集したり、セラピストへの紹介を頼んだりする投稿が可能だったし、クイアやトランスセクシュアルの人々の健康に関する情報の提供を求めたりできた。しかし、その全部がFBの新方針によって危機的状況になりつつある」と、シーラ・アディソン医師が言う。彼女は結婚と家族を専門とするセラピストで、多種多様な嗜好と背景の人々にマージン・トゥ・センター・カウンセリング(※辺縁から中心までのカウンセリングの意)で仕事を行っている。

オンライン上のリソースで重要なのは性教育だけではない。仲間同士の情報交換も危険に晒されている。トランス女性を再び例に挙げるが、彼女たちは包括的なクイア・コミュニティに歓迎されないことが多々あり、そんなときにFacebook上でアドバイスや慰めを見つけるのだ。Facebookの広報担当者は「この新方針がセクシュアリティの話し合いを禁じるものではない」と言う。しかし、社会の主流や基準とは異なるセクシュアリティに関する交流を、この新方針が効果的に抑えてしまう可能性は否定できない。この点ですでに効果が出ており、その結果すら出始めていると、支援を必要としている人と支援者をオンラインで見つけるためにFacebookを活用しているクイアのアリ・デニスが言う。

Translated by Miki Nakayama

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