【密着ルポ】ディアハンターが明かす過去と現在「同世代で最もボウイに近いのは僕だ」

ディアハンターのブラッドフォード・コックス(Photo by Daniel Dorsa for Rolling Stone )


ロケット・パントが振り返る、危機だらけだったバンドの過去

午後7時半。違う1曲で犬の吠え声が必要だと言って(「フォークナー、吠えろ!」と促しながら)愛犬からいい吠え声を引き出そうという大胆な試みが失敗に終わり、コックスは夕食に行こうと誘ってきた。彼は私たちを外へと連れ出し、トワイライトブロンズ色の自分のヴォルヴォのステーションワゴンに乗車させる。「2018年の僕のトップ・ソングを知りたいかい?」と言って、スマホのSpotifyアプリを私に見せる。ホイットニー・ヒューストンの「恋は手さぐり(How Will I Know)」が2018年にコックスが最も再生した曲で、薄明かりの通りを車で走る間、車内は大音量のこの曲で充満する。



愛犬フォークナーを自宅に降ろしたあと、コックスは高級ショッピングモールの中にあるラーメン店に私たちを連れて行く。そこではディアハンターのギタリスト、ロケット・パンドがおしゃれなティールスエードのブレザーを着て待っていた。「これ、eBayで買ったんだ。15ドルならいいんじゃないかってね」と自慢げにパンドが言う。

このラーメン店には長い行列ができていて、私たちは近くのリサイクルショップに移動する。コックスとル・ボンは掘り出し物の列を徘徊し、その後ろをパンドがおしゃべりしながら歩いている。

コックスにとって最も古い友だちの一人で、一番長くコラボレーションしているギタリストのパンドは、ディアハンターのパブリック・イメージ的にはコックスの激しさや辛辣さの対局にある、ジェントルでうっとりする存在という大きな役割を演じている。今夜、そのイメージがあながち嘘ではないと証明されているようだ。夜が深まるに連れて機嫌が悪くなる一方のコックスの横で、パンドの存在は私に安心感を与えてくれる。この夜、コックスは『「このスタジオの名前はなに?』のような麻薬捜査官のような質問をするな」と、私を繰り返し非難し続けるのだから。

それにコックスと違って、パンドは『Why Hasn’t Everything Already Disappeared?』について話をしたくて仕方がない。この作品は、何度も中断を繰り返しながら長期に渡ったレコーディング・セッションの叙事詩なのだ。レコーディング・スタジオもマーファ、エルパソ、ロサンゼルス、アトランタと複数使ったのである。「みんなのやる気が萎えてしまったり、気分のアップダウンを繰り返したよ。でも最終的に出来上がった作品には有頂天になった」と言ってパンドは続ける。「僕たちアルバムを作っていると、必ず途中で危機が訪れるんだ。文字通り、毎回そう。もしかしたら、途中の危機がない作品はディアハンターの作品とは言えないのかもね」と。

そして、現在のディアハンターは驚くほど安定していると、バンドが付け加えた。「活動を続けているうちにみんなが大人になったのさ。昔はよくケンカしていたからね。今はみんな落ち着いている」

Translated by Miki Nakayama

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