ニール・ヤングが語る、今後のリリース予定やクレイジー・ホースの復活

―SpotifyやAppleから自分の楽曲を取り下げて、Archivesの高音質の楽曲のみを聴かせたくはなりませんか?

一度そうしたが、また戻したんだ。多くの人が音楽を入手する場所だからね。たとえどんな形であれ、俺は皆に音楽を聴いて欲しいと思う。多くの音楽を聴いて楽しんでもらうために、俺は努力を続けている。ただし価格は変えない。音楽は音楽だから。ハイレゾだからって、巷で聴いている酷いサウンドの2倍の金額に設定したりはしない。同じ金額にすべきだ。どれを選ぶかは人それぞれだ。MP3で満足する人は、MP3を入手すればいい。それでいいんだ。

―音質にこだわらない人が多く、SpotifyやYouTubeなどでも満足している人々に対してフラストレーションを感じませんか?

そのような人たちに全くフラストレーションを感じたりはしない。苛つくのは、楽曲の音質がだんだんグレードダウンされていること。CDに始まり、MP3でガクンと下がり、さらにストリーミングだ。まるでフィッシャープライス(乳児用教育玩具メーカー)のクオリティレベルにグレードダウンされている。人々はおもちゃレベルの音楽を聴かされているんだ。かつてはそんなことはなかった。俺が曲を作り始めた頃、アナログ盤レコードの音質は神だった。すばらしいサウンドだったので、レコードは立派な贈り物として心に響くものだった。アナログ盤の良さをデジタル化したのがハイレゾだ。技術の進化は芸術にとって良いことだ。

音質にこだわらない人々に腹を立てたりしない。逆にこだわる理由は何だ? 教えて欲しい。何と比べればいいんだ? 彼らは他の良い音質の音楽を聴いたことがないんだ。俺はそう思っている。

今流行している音楽サービスに関わる人々は、芸術に対する責任を担っている。Appleには、Appleを偉大たらしめている全ての事柄が、音質を含め、ただ踏みにじられ忘れ去られる類のものでない、ということを世界に知らしめる責任がある。芸術を楽しむ上でとても重要なことだ。作品のコピーを使ってピカソ展を開催するようなものだ。Spotifyが正にそうだ。そのような世界では、ピカソが好きだと思っても、「OK、次を見てみよう」となってしまう。夢中になってのめり込めなくなっている。音楽はもっと心で感じるべきものだ。

全ては音楽を心で感じることにつながっている。テクノロジーのせいだ。テクノロジーの産物を人々が聴いている。これが21世紀の現状だ。20世紀よりもサウンドが劣っていてはどうしようもない。

―Archivesの今後の中長期的な計画を教えてください。

決して妥協したくないという私次第だと思う。人々が望むクオリティの実現のために、できる限りのことをしようと思っている。そのためにすべきことがたくさんある。回避してきたのかもしれないが、正常な状況とはいえない。博物館や保管庫を回って書庫の中を探索し、いろいろなモノを見つけ出し、それぞれの相互関係を発見する作業だ。手書きの歌詞や未公開の動画などがある。素晴らしいが長いこと日の目を見なかったものがバラバラに保管されている。作品それぞれにまつわる歴史だ。各時代や音楽の雰囲気が感じられる。ひとつのプロジェクトで、ぜひ皆に聴いて楽しんでもらいたい。

俺がプロジェクトを続けている本当の理由がここにある。俺は人々が聴いて楽しいと思う楽曲を作ってきた。今のアーティストたちには、俺が聴いてきたのと同じ様に音楽を聴いて欲しいから、プロジェクトを実現したいと思っている。素晴らしいシンガーソングライターも何人かいる。あらゆるジャンルに才能豊かなアーティストがいる。皆、素晴らしい。上質な音楽のサウンドが才能あるアーティストをもっと成長させ、彼らの夢を叶え、作品を人々に聴かせることができるようになるだろう。考えるまでもないシンプルなことだ。60年代のヒッピー時代に、スマホを使ったハイレゾ音楽のストリーミングサービスが存在し、他とは音質が明らかに違ったら、やはりハイレゾを取るだろう。それが21世紀だ。これまでに我々が成し遂げてきたことを見てみるといい。そのようなことは実現できると感じるだろう。それは良いことだ。世界の誰もが、より良いサウンドの音楽を聴くようになるだろう。そんな状況を想像できるかい?

―Archivesのタイムライン内に、『Chrome Dreams』、『Homegrown』、『Boarding House』、『Toast』をはじめ数々の未発表アルバム用のプレースホルダーがあります。これらアルバムもこちらで聴けるようになるのでしょうか?

現在、その内の何枚かについてマスタリング作業に入っている。特別なものなので、ひとつひとつに時間を掛け、オリジナルトラックをよく確認して最もクオリティの高いものを選ぶようにしている。アートワークも、当時各アルバム用に作られたものを用意した。多くの作品があるので、1年に3枚か4枚のペースで出したいと思っている。作った当時と同じように、それぞれの作品を大切にしたい。

Translated by Smokva Tokyo

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