サンダンス映画祭を揺るがした、マイケル・ジャクソンの衝撃的ドキュメンタリー

1988年のツアー時に専用機内で撮影されたマイケル・ジャクソンとJimmy Safechuck(当時10歳) (Photo by Dave Hogan/Getty Images)

キング・オブ・ポップことマイケル・ジャクソンから性的暴行を受けたとする2人の男性の証言を柱とする、ダン・リードが監督を務めた2部構成4時間に及ぶドキュメンタリーは、議論を呼ぶこと必至の衝撃作だ。

今年のサンダンス映画祭の開催にあたり、メインストリートでは大規模な抗議活動が起きると予想されていた。しかし、ユタ州パークシティにあるEgyptian Theater周辺で見られたのはデモ集団ではなく、爆発物探知犬を連れた警察官、そして尋常ではない数の警備員の姿だった。同映画祭のディレクターを務めるジョン・クーパーは不測の事態に備え、会場のロビーにプロの看護師たちを待機させていた。

そういった対応をとったことには、もちろん根拠があった。幼少期にマイケル・ジャクソンから性的暴行を受けたとする2人の男性の証言を含む、ダン・リードが監督を務めた2部構成4時間に及ぶドキュメンタリー『Leaving Neverland』は、本編に子供に対する強制わいせつの生々しい描写が登場するという警告とともに幕を開ける。ホテルや民家、そしてネヴァーランドで繰り返されたとされるわいせつ行為が彼らの口から語られるうちに、視聴者はまるで自身が実際に被害にあったかのような感覚に陥る。10分間のインターバル時には困惑の表情を浮かべていたオーディエンスだが、終演後には消耗しきっているように見えた。

Wade RobsonとJames Safechuckのインタビュー映像を主軸とする(家族や妻の証言も登場する)『Leaving Nerverland』は、2人がキング・オブ・ポップとの出会いについて回想するシーンで始まる。オーストラリア生まれのRobsonは、母親のJoyが持ち帰った「Making-Of Thriller」のビデオを観てジャクソンに夢中になり、振り付けや彼の動作を熱心に研究するようになった。ショッピングモールで行われたジャクソンの曲を使ったダンスコンテストで優勝した彼は、ブリスベンで行われたジャクソンのコンサートのバックステージで、本人と対面する機会を与えられた。ステージ上でもダンスを披露してオーディエンスを沸かせた彼は、その後滞在先のホテルでジャクソンと共に時間を過ごした。ジャクソンは彼とその家族に、アメリカに来ることがあれば連絡して欲しいと伝え、事実JoyとWade、そして彼の妹の3人は、後にネヴァーランドに招待されている。髪にパーマをあて、ジャクソンとまったく同じ服を着ていた彼は、当時まだ7歳だった。

Safechuckがジャクソンと出会ったのは、ペプシのコマーシャルの撮影現場だった(ジャクソンの楽屋に忍び込んで彼のサングラスを着用していたところを、本人に見つかってしまったのだという)Robsonとは異なり、彼はそれほど熱心なジャクソンのファンではなかったが、彼が自分に興味を示したことで舞い上がり、自分を重要な存在と考えるようになったという。ジャクソンは彼の家族とも交流を持つようになり、カリフォルニアのSimi ValleyにあったSafechuck家で夕食を共にしたり、一緒に映画を観たりすることも珍しくなかったという。ジャクソンはハワイで行われたPepsi Conventionに家族全員を招待し、彼が滞在するホテルにJamesを招いた。アメリカに戻る飛行機の中で、ジャクソンはJamesのことをベタ誉めしている。彼は後にネヴァーランドとなる場所にSafechuck一家を招待し、Jamesだけをそこに留まらせるよう家族を説得した。Jamesは当時10歳だった。

Translated by Masaaki Yoshida

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