「業界の外」から音楽業界の流れを変える、知っておくべき世界の実力者トップ5

3)馬化騰、テンセント社CEO

今回のリストに、音楽ストリーミングの最大手のボスを加えたのには大きな意味があった。Spotifyの共同経営者ダニエル・エク氏かマーティン・ローレンヅォン氏でもよかった。両氏は今でも、世界最大の音楽有料プラットフォームの議決権の過半数を握っている。あるいは、当然の理由で、アマゾンのジェフ・ベゾス氏やAppleのティム・クック氏がランクインしてもよかった。

だが、今後10年世界の音楽ストリーミングの未来を支配するのは誰が適任か、という話になると、彼らの誰一人としてテンセント社には敵わない。そもそも、テンセント社はSpotifyに大きな影響力を持つ大株主なのだ。昨年4月3日に証券取引委員会に提出された財務諸表によれば、テンセント社は――テンセント・ミュージック・エンターテインメントの半数以上の株式と、Image Frame社の所有権を引き換えに――Spotifyの株式の9.1%を所有した。テンセント社による株式所有はSpotifyとの取り決めの一環で行われたものだが、その中でSpotifyは、成長著しい中国の音楽市場に進出しないことで合意したようだ。中国市場は2017年、2億9230万ドルを音楽業界にもたらした。

それ以外にも、テンセント社は昨年、8000万人以上のアクティブユーザーを誇るインドの音楽ストリーミング会社Gaana社に対して、1億1500万ドルの投資を行った(Gaana社は間もなく、Spotifyと一騎打ちを繰り広げることになるだろう。Spotifyは1月31日、インド市場に参入することになっている)。

そしてもうひとつ、テンセント社が58.1%の株式を所有するテンセント・ミュージック・エンターテインメントの存在がある。TMEはQQ音乐、酷狗音乐、酷我音乐、WeSingといった中国最大の音楽サービス各社の親会社で、合計すると月間ユーザー数は8億人以上(Spotifyの利用者の4倍相当)。さらにTMEは12月にニューヨーク株式市場に上場し、10億ドル以上の資金を調達した。JPモーガンやHSBCといった企業も、同社への期待感を高めつつある。

テンセント社の巨大なメディア帝国の頂点に立つのが、CEOを務める馬化騰、別名「仔馬のマーさん」だ。深圳を拠点に市場価値4000億ドル以上の企業の指揮を執る彼は、個人株主として9%の株式を所有し、彼個人の純資産は400億ドル超。かつては中国No.1の大富豪と呼ばれたこともある。

2019年、テンセント社が戦略的買収によってユニバーサル・ミュージック・グループ株の50%を獲得し、世界の音楽業界を牛耳るのでは、という見方もある。だがその前に、このあと紹介する2人のボスキャラを倒さなくてはならないだろう……。

Translated by Akiko Kato

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