Spotify、10年以上を経て初の黒字転換、野心溢れる今後の展望を明かす

2018年、Spotifyイノベーターデイで登壇するCEOのダニエル・エク (Photo by Ilya S. Savenok/Getty Images for Spotify)


ここでエクの公式文書の全文を紹介しよう。


オーディオ ファースト

10年以上前、私たちは消費者の皆様にいつどこにいても正当な価格で聴ける音楽、という不可能と思われたものを提供するため、Spotifyを創業しました。その間、私たちは音楽業界にはびこっていた違法ダウンロードを砕き、有料制のオンデマンドストリーミングを通してグローバルレベルでの音楽の成長を取り戻しました。私はこれまでSpotifyが成し遂げたことを誇りに思っています。しかし、消費者の皆様のために2008年に音楽配信サービスを開始した時、音楽だけでなくオーディオすべてがSpotifyの未来につながるとは思ってもいませんでした。

世界中に2億人以上ものユーザーを抱えるSpotifyは、はやくも世界で最も人気のアプリの一つとなりました。それでも、今私たちがいる場所以外にチャンスはあります。そのチャンスをつかむことで、私たちは音楽を超え、全く新しいユーザーエンゲージメントを皆様にお届けできるのです。

こうした状況をよく理解するため、動画業界の現状を見てみましょう。消費者が動画の視聴に費やす時間は、およそオーディオと同じです。動画というのは約1兆ドル産業です。それに対し、音楽やラジオ産業は約1千億ドル産業です。そこで私はいつも同じ問題に立ち返るのです。私たちの目には、本当に耳よりも10倍の価値があるのだろうか? と。そうではない、と私は固く信じています。たとえば、人は今でも1日2時間以上ラジオを聴きます。そして私はラジオという視聴体験をSpotifyに取り入れることでユーザーエンゲージメントを深め、新しい価値観を作りたいのです。テレビ画面を見る時間を減らそうという世界的な試みによって、オーディオには大きなチャンスが訪れようとしています。

こうしたチャンスは、オーディオの成長における次の段階とともに始まります。その段階とは、ポッドキャストです。人々を楽しませ、教養を深めさせ、チャレンジ精神やインスピレーションを与え、文化の壁を壊して人々を一つにできるストーリーを伝える方法は無数にあります。その形式は常に進化しています。ポッドキャストは、今はまだ比較的小さなビジネスですが、とりわけSpotifyにとっては非常に大きな成長が見込めると思っています。

たった2年足らずでSpotifyは世界で2番目に大きいポッドキャストプラットフォームへと成長しました。でももっと大切なのは、Spotify体験の一部としてユーザーにポッドキャストを気に入っていただけたことです。Spotifyのポッドキャストユーザーは、他のユーザーと比べる約2倍の時間をSpotifyに費やし、音楽に至ってはさらに長い時間Spotifyを楽しんでいます。それだけでなく、私たちは独自のプログラムを提供することで、今までSpotifyに関心がなかった人々にも興味を持っていただけるのです。

ラジオ業界に関するデータを見る限り、これから先Spotifyで視聴できる内容の20%以上は音楽以外のコンテンツになります、と堂々と宣言していいと思うのです。これは、オリジナルコンテンツによってもっと速く成長するポテンシャルがあり、SpotifyがSpotifyであり続けるため差別化できることを意味します。すべては世界ナンバー1のオーディオプラットフォームになるという目的のためにあるのです。

私たちはクリエーターにとって有意義なチャンスを提供できるプラットフォームを構築しています。それはユーザーを楽しませ、夢中にし、インターネットレベルでの収益化を加えることで業界のさらなる発展が期待できる、と信じるSpotifyにとって、より強固なビジネスモデルを提示します。

こうした理由により、SpotifyはGimletとAnchorというポッドキャスト会社2社の戦略的買収について皆様にご報告させていただきました。GimletとAnchorは業界で異なる役割を担う、全く別の会社です。世界最高のコンテンツクリエイターであるGimletには、近年Amazon Primeバージョンが人気を博した「Homecoming」や、インターネットカルチャーを席巻した「Reply All」などのユニークな人気ポッドキャスト番組があります。Anchorはオーディオクリエーションを全く新しい方法で再解釈し、世界中の次世代ポッドキャスターの制作活動を可能にしてきました。その結果、第4四半期で150億時間分のコンテンツが誕生しました。トップクラスの両社とともに、他にはない、オリジナルなコンテンツを提供してまいります。GimletとAnchorはSpotifyを世界中のポッドキャストクリエイターのための一流プラットフォーム、さらには最高のポッドキャストプロデューサーへと成長させてくれるでしょう。

ポッドキャストでは、私たちが音楽で実現したように、ユーザーがSpotifyに期待するようになったキュレーションとカスタマイゼーションに焦点を当てて取り組みます。より優れた発見、情報、収益をクリエイターに提供します。この度の買収はSpotifyが世界屈指のオーディオプラットフォームへと成長する速度を有意義に速め、世界中のユーザーに最良のポッドキャストコンテンツを提供し、Spotifyブランドの魅力をさらに高めながらユーザーのリスニング体験の品質を改善してくれるでしょう。

Spotifyにとって音楽の重要性が減ったわけではないことをはっきりと申し上げます。Spotifyの中核を担うビジネスのパフォーマンスは極めて好調です。しかし、さらにオーディオという世界を追求する上で——とりわけオリジナルコンテンツの制作において——ビジネス全体のスケールを把握し、サブスクリプションや広告を通したモデルに重きをおく必要性があります。だからこそ、今ここで投資し、未来のチャンスをつかむことが賢明である、という判断に至ったのです。私たちは、Spotifyが世界中のオーディオ経済の中心であり続けてほしいと願っています」

来たる10年の特徴として、よりカスタマイズされた没入型のオーディオ体験が挙げられます。競争も熾烈になるでしょう。このような未来に向けて準備しているのは私たちだけではない、ともちろん自覚しています。だからと言って、私はオーディオ業界の他社の立場に身を置きたいとは全く思っていません。というのも、78拠点で活動するSpotifyほどの世界的な規模とオーディエンスを持つ会社などないからです。Spotifyほど、アーティストやクリエイターだけでなく、消費者にも利益をもたらす二面的市場を持つオーディオ会社は存在しません。オーディオ広告や、ここまでグローバル規模なサブスクリプション収入モデルを備えた会社もありません。Spotifyには、音楽業界の誰にもないエンジニアリング能力とオーディオに関する専門性があります。そしてGimletとAnchorが加わることで、Spotifyは他社とは比べられないほどたくさんの番組を提供する、世界屈指のグローバルポッドキャストパブリッシャーへと成長するのです。成長手段にはこの産業を倍の規模に拡大させるポテンシャルがあります。そして、Spotify以上にオーディオ一つにフォーカスしたグローバル企業は存在しません。

私たちが成功すれば、最終的には音楽配信サービスに限らず、あらゆる形式のエンターテイメントや情報サービスをめぐる競争にもっと広く関わりたいと思います。これはまさに私たちが望むところです。もっと公平なフィールドにおける公平な競争によってこそ最も独創的な生産物と革新が生まれ、視聴者とクリエーターの両方に最高の体験をもたらします。この業界は絶え間ない変化にさらされていますが、Spotifyにとっての未来は明確です。私たちは世界屈指のオーディオプラットフォームになろうとしている、そして今日という日はその未来への大事な1歩なのです。

引き続き、Spotifyをお楽しみください。

Translated by Shoko Natori

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