なぜヒットソングは減速し続けるのか? 音楽シーンのトレンドをBPMから読み解く

ザ・ウィークエンドの「コール・アウト・マイ・ネーム」は、2018年の主要ヒット曲におけるNo.1スローソングだった。(Photo by Tim Mosenfelder/Getty Images))

2018年のポップソングは、前年の平均に比べてテンポが減速する傾向にあった。過去2年間に発表された主なヒット曲の平均テンポはBPM93前後。なぜリスナーはスローテンポな音楽を求め続けるのか。アップテンポ・ソングが現状を打破する可能性はありうるのか。

このストリーミング時代において、主要ヒットソングはどれもゆったりした傾向にある。2012年から2017年にかけて、Spotifyでのストリーミング回数が最も多かった上位25曲の平均テンポはBPM90.5。1分間あたり23拍も減少したことになる。

いったいなぜか? その理由には諸説ある。単純に、スローテンポにどっぷり浸るサザン・ヒップホップが流行したからだという説もあれば、アメリカ国内が軽快でエネルギッシュな曲の気分ではなくなっている、という説もあるし、ストリーミング・プラットフォームが何でもかんでも「チルアウト」一辺倒で、エネルギッシュで耳障りともとられかねない楽曲が入り込む余地がないのだ、という説もある。

2017年当時、作曲家やプロデューサーたちは口を揃えてこう言った――ポップに関しては常にそうだが――ウケのいいテンポは時代とともに移り変わるもので、いま主流のものもいずれは過去のものになるだろう、と。それも一理あるかもしれない。だが、とりあえず今のところリスナーは、ゆったりとした物憂げな方向に魅せらているようだ。Soundfly社の最新のレポートによると、2018年のビルボードチャート上位5曲にランクインした曲をすべて分析したところ、平均BPMは92.6だったことが判明した。この数字は、2017年の上位5曲の平均BPM93.2 BPMとほぼ変わらない。2017年の大ヒット曲の中でとくに多かったのがBPM79~80。2018年はBPM78~79だった。

曲のスピードと人気度はまったく相性が悪いわけでもない。Soundflyが測定したところ、カーディ・Bとバット・バニー、J・バルヴィンの「アイ・ライク・イット」はBPM136だった。同じように5速ギアで展開するヒット曲は他にも2曲あった。いずれもメンフィスのビートマスター、テイ・キースがプロデュースしたもので、ブロックボーイJBとドレイクの「ルック・アライブ」(BPM140)と、ドレイクの「ノンストップ」(BPM154)だ。




「テンポをここまであげると、必然的にハーフスピードのように感じてくるんですよ」と指摘するのは、レポートを作成したディーン・オリヴェット氏。「でも音楽学校では、最終的な決め手になるのは世間がどうとらえるかだ、と教わるんです。そしてポップミュージックの世界では、みんなが踊れるかどうかにかかってくる――『ノンストップ』の中にもそういう場面があって、観衆が154のテンポでノリまくっている。なるほどたしかに、と思いました」


Translated by Akiko Kato

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