ザ・キュアーのロバート・スミス、自身のアルバム14作を振り返る

12.
『Bloodflowers』
2000年
Bloodflowers

1999年5月に完成していながら、「ミレニアルの喧騒が過ぎるのを待つというレコード会社の思惑」(スミス談)によって発売が延期された『Bloodflowers』は、『Wild Mood Swings』とは趣の異なるアルバムだ。それはむしろ、『Faith』、『Pornography』、そして『Disintegration』の大部分のように、曲単位ではなくアルバム全体をひとつの叙事詩として聴かせるような一貫したムードを宿している。

スミス:僕は当初、『Bloodflowers』を簡潔なアルバムにするつもりだった。いちアーティストの作品で70分を超える作品は、ほぼ例外なくやり過ぎだからね。そういう理由で当初は45分を目安にしてたんだけど、収録曲を9曲まで絞っても、収録時間はまだ1時間を超えてた。各曲を短くする必要があるのかもしれないと思ったけど、長尺であること自体が曲の魅力になっていたんだ。自宅で「Watching Me Fall」(原曲は11分13秒)を編集して6分未満にしてみたんだけど、もう完全に別の曲になってしまってた。

1曲目の「Out of This World」も6分30秒から4分45秒まで削ってみたけど、ラジオでかけるにはイントロがまだ長すぎると言われた。でも僕はそのゆっくりとした展開が気に入っていたし、くだらない3分30秒ルールみたいなのを強要されたくなかった。デモを作ってる段階では、僕らなりのポップソングみたいなのも幾つか作ったんだけど、どれも浅はかで安っぽく聞こえたんだ。

でもあんなにレコーディングが楽しかったのは、それこそ『Kiss Me〜』以来だった。重みと情熱の宿ったアルバムを楽しみながら完成させる、そういう目標をしっかり達成できたと思う。制作中に自殺しないっていうルールも守れたしね。


※Spotifyはこちら

Translated by Masaaki Yoshida

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