ティーンエイジ・ファンクラブのソングライティング秘話、珠玉のメロディがひらめくまで

―例えば「About You」(1995年の4th『Grand Prix』収録)は、レイモンドにとって、初めてアルバムのリードトラックになった曲ですが、あれはどんな風に作ったんですか?

レイモンド:ちょうどドラムがブレンダン・オハラからポール・クィンに変わった時で。新しいメンバーで曲を作りたいと思ったんだよね。確かツアー先のホテルだったかな、場所は忘れちゃったけど、「明日のライブでは新曲を披露しようぜ」って盛り上がってさ。とりあえず手っ取り早く完成させなきゃっていう気持ちもあって、あんなシンプルな楽曲になったんだよ。

―確かにシンプルですが、ライブでもメチャメチャ盛り上がりますよね。コーラスから始まるのもインパクトあるし。

レイモンド:思いついた順に並べたらああなっただけで(笑)、「コーラスから始まったらびっくりして盛り上がるはず!」みたいな作為的な気持ちがあったわけではないんだよ。



―なるほど。じゃあ、ノーマンの「Everything Flows」(1990年の1st『A Catholic Education』収録)は?

ノーマン:最も初期の楽曲の一つだね。実はボーイ・ヘアドレッサー(TFCの前身バンド)時代に書いたんだ。あのバンドでやろうと思って書いたんだけど、レコーディングする前に解散してしまった。TASCAMの4トラックMTRを使って、レイと一緒にデモテープを作ったんだけど……。

レイモンド:どっちのアパートでだっけ。忘れちゃったな、MTRはノーマンのだったね。僕も結構、アイデアを出したんじゃないかなあ(笑)。で、それを他のメンバーに聴かせたら「いいんじゃない?」ってなってレコーディングした。

ノーマン:それほど時間もかけず、パパッと出来た気がする。それを未だにやっているんだから不思議だよね(笑)。もちろん、今やっても相変わらず楽しいし、最後の長いギターソロも毎回エキサイトする。

―あの、延々と続くようなチョーキング・ギターは誰のアイディア?

ノーマン:あれはレイだね。

レイモンド:プリプロの段階ではまだ入ってなかったんだけど、本チャンのレコーディングでドラムがフランシス(・マクドナルド)からブレンダンに変わって、彼のドラミングを聞いていたら思いついたんだよ。

ノーマン:そういえば20年くらい前、ジョン・ピール・セッションに出演したJ・マスキス(ダイナソーJr.)が、この曲をカヴァーしてくれたのは驚いたな。しかもギターはロン・アシュトン(ストゥージズ)だったしさ。その時のJのチョーキングも凄まじかったよ。



―「About You」も「Everything Flows」も20年以上前の曲なのに、未だにライブの人気曲であり続けているのは何故だと思いますか?

ノーマン:なんでだろう?(笑) 基本的に、俺たちの姿勢がずっと変わってないからじゃないかな。強力なメロディと、それを支えるドラムとベース。そういう曲をずっと書き続けているから、昔の曲も今の曲も同じように愛されているのかも知れない。でも、正直なところ自分でもよく分からないよ。

レイモンド:「自分たちらしさ」を大事にしてきたからだと思う。小賢しいことを一切やらず、自分たちのために、自分たちが納得のいく曲を、直感に従って書いてきたからね。そのおかげで、何人かの支持者を得ることが出来たんだ。

―「何人か」って(笑)。では最後の質問です。昨年からジェラルド・ラブがバンドを離れました。TFCって、あなたたちとジェリーという3人のソングライターがいて、「自分で作った曲を自分で歌う」というやり方をこれまで貫き通してきたわけじゃないですか。これからジェリーの曲は、ライブでどうするつもりですか?

ノーマン:そう、君の言う通りだよ。だからジェリーの曲は、今後ライブではやらなくなるだろうね。本人とも話し合ったんだけど、彼以外の人が「Star Sign」(『Bandwagonesque』収録)や「I Need Direction」(2000年の6th『Howdy!』収録)を歌うのは違うんじゃないかなと思ってさ。実はこの間、ジェリーが抜けた後に作った新曲(※)を彼にEメールで送ったら「いい感じだね!」って言ってくれて、それを(来日ツアーの前にライブした)香港でも披露してみたんだ。今日もやってみるつもりだよ。

今、ツアーのサポートには俺と「ジョニー」というユニットをやっているユーロス・チャイルズ(ゴーキーズ・ザイゴティック・マンキ)がキーボードで、ベル&セバスチャンのサポートもやっているデイヴ・マッゴーワンがベースで入ってくれて。バンドとしてもすごくいい状態だよ。まあ、僕ら2人だけでもたっぷり曲はあるから、それを引っ張り出してくるチャンスなのかなと思ってる。もちろん、ライブの後半にはいつもの楽曲も演奏するつもりだから、是非とも楽しんでほしいな!

※おそらく「Everything Is Falling Apart」と「I’m More Inclined」のこと。この2曲は日本でも披露された。


Photo by Kazumichi Kokei

Translated by Kazumi Someya

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