Salyuと小林武史、3年ぶりのオーケストラコンサートで見せた美麗さ

さらに、囁くような歌い方が幻想的な「エロティック」、まるでポーティスヘッドのようなダークな曲調と、どこかオリエンタルなメロディのコントラストが印象的である「アラベスク」と、Lily Chou-Chou名義の楽曲を立て続けに披露。そして、「ここからは小林武史さんのピアノ協奏曲の世界をお楽しみください」と言い残し、Salyuがステージを去った後は、小林がオーケストラと共に「円奏の彼方」の第4楽章と「Theme of YEN TOWN」を演奏した。

ここで20分の休憩を挟み、第2部はラヴェルの「亡き王女のためのパヴァーヌ」からスタート。オリジナルはピアノ曲だが、これをオーケストラアレンジにして、ピアノの主旋律をなんとSalyuがヴォカリーズでなぞるというチャレンジングな試み。驚くようなロングトーンや、微妙なアーティキュレーションを駆使しながら、オーケストラの一部となって歌う彼女の姿に、思わず息を呑んだ。

ハスキーな歌声が、少年のような繊細さと母のような優しさを内包した「再生」、伸びやかかつスリリングな歌声が圧巻だった「landmark」と続き、早くもコンサートは終盤へ。「風に乗る船」では、栗田が細身の体をくねらせながら、まるでダンスを踊るようにコンダクトを振る。そしてフィナーレは、ティンパニとホーンが高揚感たっぷりに彩る壮大な「コルテオ ~行列~」から、不朽の名曲「to U」へ。あえて控えめにアレンジされたオーケストラが、Salyuの歌声と小林のピアノを引き立てた。

 鳴り止まないアンコールに応え、再び登場した2人は「THE RAIN」を演奏。どこかシガー・ロスを彷彿とさせるような、ユーフォリックなメロディが天から降り注ぐ。そして最後にもう1曲「Lighthouse」を情感たっぷりに歌い上げ、この日のステージに幕を下ろした。

日本の「至宝」ともいえる、美しいメロディと美しい歌声。それを存分に堪能した夢のような一夜だった。

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