ルー・リードが1986年にNYの伝説的クラブで演奏した「ワイルド・サイドを歩け」を回想

1986年7月16日にザ・リッツでライブを行ったルー・リード(Photo by Waring Abbott/Getty Images)

ルー・リードのキャリアを代表する名曲を、今年5月にウェブスター・ホールとして再開されるニューヨークのクラブで撮影されたライブ動画から振り返る。

約2年間のリノベーションを終えて、ニューヨークのウェブスター・ホールが今年の5月1日に再開される。こけら落とし公演を行うのはパティ・スミスだ。そしてMGMT、シャロン・ヴァン・エッテン、クリス・ロビンソン・ブラザーフッド、ビルト・トゥ・スピルなどの出演が予定されている。同クラブのプレスリリースによると、今回のリノベーションには「セントラル・エアコンの改良、お手洗いの拡張、スムーズな入店出店を促す吹き抜け階段の追加、同クラブ史上初のエレベーターの設置」が含まれるという。

ウェブスター・ホールのビルは1886年に建てられており、建築当時は仮面舞踏会から労働組合の集会、結婚式、講演など、あらゆる目的で使用されていた。しかし1953年にRCAレコーズに買収され、このレコード会社の主要レコーディング・スタジオとなった。RCAレコーズと契約した直後にエルヴィス・プレスリーが「ハウンド・ドッグ」をレコーディングしたのもこのスタジオで、フランク・シナトラからハリー・ベラフォンテやルイ・アームストロングまで、当時の人気アーティストたちがこのスタジオで多くの作品を生み出している。1962年2月2日、ボブ・ディランがここで行われたハリー・ベラフォンテのセッションでハーモニカを演奏し、これがディランにとってプロ仕様のレコーディング・スタジオで作業した最初の体験となった。

1980年、ビルの所有者が変わったことを契機にウェブスター・ホールはロッククラブへと変貌を遂げ、メインのパフォーマンス・スペースであるザ・リッツが新たに加えられた。このため、すぐさまニューヨークの主要コンサート会場となり、プリテンダーズ、キッス、プリンス、ティナ・ターナー、エリック・クラプトンなどがここでコンサートを行った。そして1980年12月6日、ジョン・レノンが殺害される2日前、U2がこのクラブで北米デビュー・ライブを行ったのだが、このとき会場にいた観客は25人程度だったという伝説が残っている。



1986年7月16日にザ・リッツでライブを行ったルー・リードが「ワイルド・サイドを歩け」(原題:Walk on the Wild Side)を演奏している動画がこれだ。「この曲はホンダのスクーターのテーマ曲としても知られている」と、リードが観客に語りかけているが、これは当時、ホンダのスクーターのコマーシャルでこの曲が使用されたことを指している。そして「これは利益相反だって言うやつがいる。だって俺、ハーレーのシャツを着ているからね。でも、俺はそういう連中に『なあ、おい、あれはスクーターだぜ、勘弁してくれよ。俺だって家賃を払わなきゃいけないし、お前ら冗談も通じないのか?』って言い返しているよ」と、リードが続ける。

洞窟のようなウェブスター・ホールでは、かつて羽目を外したワイルドなダンスパーティーも行われたこともあり、このクラブのファンの多くが、BSEグローバルとボワリー・プレゼンツが牛耳る新たな管理会社によって、クラブで行われるお楽しみが制限される可能性を危惧している。しかし、そんなことはないと管理会社側は強調し、「かつてここは非常にダイナミックなクラブで、何よりも多様性が信条でした。再開したときに、あの頃の多様性を復活させたいと思っています」と、BSEグローバルのプログラミング部長キース・シェルドンがニューヨーク・タイムズ紙に語っている。

Translated by Miki Nakayama

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