子どもをターゲットにした欧米の自殺ゲーム「Momoチャレンジ」、警察が保護者へ警告

この画像はInstagramに投稿されるや、Redditの「r/creepy」というサブフォーラムでとくに話題となり、何千件ものupvoteやコメントが寄せられた。

Momoチャレンジの起源についてははっきりしていないが、噂によれば、最初はスペイン語圏で広まったといわれている。メキシコ当局の見解では、Facebookのとあるグループに端を発しているという。だがGoogleトレンドによれば、Momoチャレンジが英語圏で勢いを増したのは、ReignBotというYouTuberが2018年7月に作成した、Momo現象の全貌を明らかにする動画がきっかけだ。動画によれば、「Momoの」電話番号にメッセージを送ると、一連の奇妙な指令をコンプリートするよう指示をうける。指令は、深夜にホラー映画を見ろ、という無邪気なものから始まって、どんどん危険なものへと移っていき、しまいには自傷行為、さらには自らの命を絶つよう強いるようになる。指令を達成できなかった場合は、個人情報が暴露されたり、危険な目に遭ったりする。

ReignBotの動画はMomo現象の正体を暴き、これが比較的たわいもないきっかけから生まれたものであると示した。にもかかわらず、英語圏ではMomoチャレンジの危険を報じるニュースが広がりつつある。インターネットの安全性に関する「専門家」らの言葉を引用し、自分の子供がMomoをプレイしていないか、あやしい兆候に目を光らせるよう親たちに呼び掛けている。なかでもよく耳にするのがブエノスアイレスで自殺した12歳の少女のニュースで、彼女が自殺したのはMomoチャレンジが原因ではないか、というものだ。だがこのような噂は根拠に欠け、事実確認もとれていないようだ。また「午前3時にMomoチャレンジをしよう」という動画もYouTubeに数多く投稿されているが、Momoをネタにしたおふざけ動画がほとんどのようだ。

また、ペッパピッグのような子供向けキャラクターや、スプラトゥーンのゲーム画面をMomoの画像と編集して、子どもたちに自傷行為を指示する動画がYouTubeにあがっているという噂も浮上している。こうした動画は、ネット住民らが子どもを怖がらせる目的で作成したものとみられる。「再生をストップする見子どもいるでしょうが、影響されやすい子どもは見続けてしまうでしょう」と、全米自殺研究協会の理事メンバーで臨床心理士のエイプリル・フォアマン博士は言っている。

実際のところ、注意するべきか?

Momoチャレンジと、そこから生じる集団パニックは、Blue Whaleチャレンジの時と同様、なんとも気味が悪い。Blue Whaleは昨年ロシアを中心に広がった現象で、ロシアのマスコミの報道によれば、10代の若者たちが50日間にわたって一連の指令をこなし、最終的には自殺するよう促される、というものだ。

ネットで広まるチャレンジでよく見られるように、Blue Whaleチャレンジの噂の中には真実も含まれている。ロシアでは10代の自殺率が急増(過去最高の自殺率を記録)、フィリップ・ブデイキンという男性が逮捕され、ソーシャルメディア・ゲームを作成してブームを扇動したとして起訴された。だが嫌疑の大半はのちに取り下げられ、噂では、その後ブデイキンはいくつかのグループを結成して、音楽活動に専念するつもりらしい。

Blue Whaleと10代の自殺を結びつける別の噂も持ち上がったが、サンアントニオ在住の15歳の少年イザイア・ゴンザレスのように、そのほとんどは裏付けが取れていない。「(Momoチャレンジのようなゲームには)事実無根ですし、脅威を与えるという証拠もありません」というのは、民俗学者のベンジャミン・ラドフォード氏。CSI(懐疑主義的研究のための委員会)の研究員でもある彼は、Blue WhaleやMomoチャレンジのような現象は、「子どもの行動を知りたがる親心が引き起こした集団パニック」だと言う。「大人、なかでもベビーブーム世代の大人たちには、携帯メールをやらない、テクノロジーが得意でないという人たちもいるでしょう。彼らは不安なんです、『娘はいつも私の携帯をいじっているけど、いったい誰と話をしているのかしら? 何をしているのかしら?』とね。若者がテクノロジーを使う際には、つねに不安が付きまとうのです」

まっさきにMomoに対する警告を発した北アイルランド警察でさえも、人々がかなり過敏になりすぎていると感じているようで、Facebookにこのような投稿を掲載した。「オープンソースをざっと調査したところ、Momoを運営するのは個人情報を狙うハッカー集団であることがわかってきました。見た目はたしかに恐ろしいですが、Momoが携帯電話から這い出して、子どもたちを襲うということはありません」

とはいえ、メンタルヘルスの専門家らは、こうしたヒステリックな報道が逆に害を及ぼし、場合によってはコピーキャットを生む可能性があると警告している。例えば、親友をナイフで刺し殺そうとしたウィスコンシン州の12歳の少女らは、のちに、インターネット上の架空の人物スレンダーマンをなだめるためにやったと主張した。スレンダーマンが実在する証拠はなにもないが、ラドフォード氏はこの事件が「ひとつの教訓」だと注意を促す。「人々が殺人を実行するのに、スレンダーマンが存在する必要はないわけですから」

Translated by Akiko Kato

RECOMMENDEDおすすめの記事


RELATED関連する記事

MOST VIEWED人気の記事

Current ISSUE