物議を醸している新作ドキュメンタリー、家族が語るマイケル・ジャクソンの真実

―この類いの告訴が起きたのはこれが初めてではないですよね。人々もそれを記憶していて、それを踏まえてこのドキュメンタリーを見るはずなので、それが先入観となる可能性もありますよね。

マーロン:そうじゃないことを願うよ。事実をチェックしたら、そんな先入観は消えるから。事実はこのドキュメンタリーが伝えることとはまったく違うんだよ。

タージ:僕たち家族はこの件に関して沈黙を続けてきたけど、その理由は侮辱は無視せよと教わってきたからだ。そのため、20年間に渡ってたくさんの嘘が流布されたし、それが世間の見方の一部となってしまったが、これらの嘘は嘘でしかない。多くの人が知らないことは、1993年の告訴は性的虐待じゃなかったってことだ。あの裁判で問われたのは過失だけだった。刑事裁判ではあの少年の証言を止めるものが何もなかった。あの少年は金がほしかったし、彼の父親も金がほしかった。だから金が支払われると、彼らはあの裁判のことなどすっかり忘れてしまったんだ。カリフォルニア州の地方検事が証拠を手に入れれば、刑事訴訟をいつでも始められる可能性は消えていないが、FBIが10年間捜査を続けても何も出てこなかったんだから。(編注:1993年のジャクソンに対する民事訴訟は当初、性的暴行、誘惑、意図的な違法行為、精神的苦痛を意図的に与えたこと、詐欺行為、過失を問うもので、最終的にこの裁判は示談となり、罪状は過失のみとなった)
僕はネバーランドに何度も行っていたし、あの頃の叔父はネバーランドが盗聴されていると恐れていた。だから10年間調査しても……当時マイケル・ジャクソンはまだ生きていたけど、証拠は一切出てきていない。

―それに対してマイケルは何かしましたか?

ジャッキー:かなり落ち込んでいたよ。ネバーランドは奇襲にあったんだ。彼の牧場に横付けされたパトカーをテレビで見ただろう? 彼らがあれをしたとき、マイケルはツアー中でネバーランドにはいなかったんだよ。

タージ:警察は叔父のコンピュータなど、すべてを押収したのに、証拠となるものは何も見つけられなかった。子どもを対象にした性的虐待者というのはコンピュータに証拠を残すことが知られていて、コンピュータから証拠が発見されることが多い。ネバーランドを奇襲したのは70人の保安官と保安官代理たちだった。まるで麻薬捜査でもしているようだったよ。僕たちはその様子をテレビで見ていた。でも、彼らはマイケルが幼児性愛者という証拠は一つとして見つけられなかった。


ロンドン滞在中のマイケル・ジャクソンとジミー・セーフチャック, 1988年。

マーロン:そして、(ダン・リードが)HBOに売ったドキュメンタリーが出てきた。リードは、真実を語っているとウェイドを信用し、セーフチャックを信用した。彼らを信用することが悪いわけじゃない。でも、検証すべきなんだよ。HBOは大企業だ。そんな企業が適性評価をしないと思うかい? 自分たちが世間に広めるものの真偽を確認しないと思うかい? ところが、彼らの発言に真実は微塵もない上に、リードが取材しているのはウェイド・ロブソンと彼の家族、セーフチャックと彼の家族だけだ。ジャクソン家には一切連絡がなかったし、リードは他の子どもたちにも連絡していない。

ジャッキー:マイケルの友人にも、マイケルを知っている人たちにも、マイケルが大好きな関係者には一切連絡なしだ。そういう人たちへの取材はなかったんだよ。

マーロン:そういう人たちへ取材するつもりはなかったのさ。リードは自分が作り上げている番組の情報を漏らしたくなかったし、偏った内容にしたかったんだよ。一方的な話にね。これは嘘じゃない。すべては金のためなんだよ。

―誰のための金ですか?

マーロン:ちょっと待ってくれ、「誰のための金」ってどういう意味だい?

―つまり、テレビ局なのか、元少年2人なのか、それとも……。

タージ:そういう人たち全員だよ。僕たちが住んでいるのは人気の度合いを金銭で示す世界だ。フォロワーやソーシャルメディアを通して、人気が上がれば手に入る金も増えるのが現実だよ。それに、今になってウェイドとジェイムズが主張し始めたのも偶然じゃない。遺産が何百億ドルにも膨れ上がっているから、マイケル・ジャクソンを虐待者だと告発することに興味を示したのさ。そこにダン・リードの思惑も合致した。だってマイケル・ジャクソンを扱って有名になったジャーナリストがこれまでもたくさんいるから。あのドキュメンタリーのディレクターですら、リードは世間の耳目を集めている事例を探していたと言っているくらいだ。これ以上にリードの思惑をはっきり表す言葉はないと思うよ。

Translated by Miki Nakayama

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