フィービー・ブリジャーズが語る音楽的ルーツ、ロックの聖地サウンド・シティでの体験

―続いて、ヴォーカルについても聞かせてください。あなたのヴォーカルってすごく美しく透き通っていて、我々リスナーは聴く度に惚れ惚れしてしまうんですけど、ご自身では自分の声をどう評価しているのですか?

面白いことに、私もジュリアンも「流れるような」とか、「透明感のある」って言われることが多いんだけど、喋るとこんな感じ(ハスキーな声質)なのよね(笑)。でも、私は歌うとき専用に声色やアクセントを変えたりするのは好きじゃなくって、これといって意識しなくても自然に出てくるのが私の歌声なの。

―去年ジュリアン・ベイカーにインタビューしたとき、「私はシンガーなんだという自覚が芽生えてからは、自分の声は価値があるものなんだって自信が持てるようになった」と語っていて、タバコも止めたと話していました。デビュー前とデビュー後のあなたでは、意識の面で何が大きく変わったと思いますか?

私も1年くらいタバコを吸ってたんだけど、同じく禁煙したわ(笑)。やっぱりツアーに出るようになってからは、自分の喉や声をケアするようになるしね。夜は11時くらいには寝るようにしているし、バーでお酒を飲むことも減ったかな。自分のヴォーカルに関していえば、もっとコントロールできるようになったと思う。

―それを特に強く自覚した楽曲は?

うーん。というよりも、毎回毎回が自分にとってチャレンジなのよね。「この曲で何々ができた」っていうよりは、「その曲がだんだんと歌えるようになっていく」というか。たとえば(ボーイジーニアスの)「Me & My Dog」だと、はじめは毎晩スクリームするような感覚だったんだけど、ツアーが終わる頃にはそこまで力まなくても自然と歌えるようになった。そういった変化の真っ最中にあると思っているわ。

―昨日のライブ(※)でカバーしたヴァル・マッカラム(ジャクソン・ブラウンのバンドに長年参加しているSSW)の「Tokyo Girl」は、日本のためにチョイスしてくれたものですか?

※このインタビューは来日公演2日目の日中に収録、夜のステージでもこの曲が披露された。

そうよ。カナダのヴァンクーヴァーで演奏するときは、ヴァンクーヴァー出身のジャパンドロイズの曲をカバーしたことがあるし、ミネアポリスで演奏するときはザ・リプレイスメンツをチョイスするみたいに、訪れる地域に合わせてカバー曲を変えるのが楽しくて好きなの。


東京・代官山UNITにて。Photo by Kazumichi Kokei

―来日公演の初日では出囃子にディスターブドの「Down With The Sickness」を使っていましたよね(※)。また、自身のグッズにもメタル・バンドっぽいロゴを使っていますし、普段からメタルはよく聴かれるのですか?


※2日目はカンニバル・コープス「Evisceration Plague」だった。

大ファンというほどではないけどね(笑)。メタリカの『ブラック・アルバム』(1991年)は大好きだし、アイアン・メイデンもよく聴いていたけど、メタルという「ジャンル」で聴くというよりは、そのアルバムやアーティスト単位で好きになることが多いかな。でも兄がメタラーだったから、自然と他の人より詳しくなっていたのかもしれないわ(笑)。




―メタラーだから黒いファッションが多いのかと思っていました(笑)。ラウド・ミュージック全般はどうですか?

リフューズドは大好きよ! あとはデス・グリップスとか……。

―ご自身でもそういった音楽をやってみたいとは思う?

きっと楽しいでしょうね(笑)。ボーイジーニアスやBOCCもそうなんだけど、ソロだったら絶対にやらないような音楽をやりたいとは思うわ。それとは別に、グルーパーみたいにコンセプチュアルなレコードを作ることにも興味がある。

―最後の質問です。長らくツアーで歌い続けていく中で、作った時とは気持ちや関係性が変わってしまった曲もあると思うんですよ。でも、ファンはその曲を求めている。そういった葛藤とどう折り合いを付けているのでしょうか?

実は、昨晩のステージでもそんなことを考えていたのよ。日本のオーディエンスってとても静かじゃない? だから騒々しいオーディエンスの前で演奏するときとは違って、目を閉じて歌うとまるで自分の練習場所にいるときのような気持ちになる。そうすると、もっとその曲を身近に感じることができるし、書いたときには分からなかったけれど、「自分はこんな気持ちを歌っていたんだ」と気付くことができるのね。コナーも言ってたんだけど、オーディエンスの前で歌うことによって、自分自身がその音楽を見つめ直すことになる。私にとって、曲との関係ってそういうものだと思っているわ。


Photo by Hikaru Hagiwara

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