追悼キース・フリント:ザ・プロディジー絶頂期の秘蔵インタビュー「人生を楽しんで何が悪いんだ?」

1997年8月21日刊行、米ローリングストーン誌の第767号で表紙を飾ったザ・プロディジーのキース・フリント(Photo by Peter Robathan/Katz/Outline)


フリントとハウレットが「ファイアスターター」を完成させた夜、2人は曲を車の中で30回は聴いたという。「俺たち2人とも、歌ってるのが俺だって信じられない様子だった」フリントはそう話す。「俺はシンガーじゃない。世の中には9歳とかからドレミで始まる歌のレッスンを受けてるやつがいる一方で、曲を書いたことも歌ったこともない俺がひたすらがなる曲が大きな成功を収めたっていうのは痛快だよな。大勢の人間が顔をしかめたに違いないけど、ざまぁみろって感じで興奮したね」

現在は使われてないロンドンの地下鉄のトンネルでフリントが暴れまわる「ファイアスターター」のミュージックビデオは、気が触れたかのようなエネルギーを見事に視覚化していた。その映像がイギリスで最も人気のある音楽番組『トップ・オブ・ザ・ポップス』で放送された際に、テレビ局には記録に残る数の苦情の電話が殺到したという。言うまでもなく、苦情の内容は「フリントの見た目が怖すぎる」というものだった。

「大衆が気を害したとしたら、俺たちの思惑通りってことだ」マキシムはそう話す。「テレビを観ている人間が死んだり、傷を負ったりするわけじゃないんだからな。やつは自分を表現してるだけだし、それを怖がってるようなやつらには落ち着けよって言ってやりたいね」



イギリスのあるタブロイド紙は、「ファイアスターター」の歌詞が放火を煽っているとして、「この病んだ音楽をボイコットせよ」というヘッドラインを一面に掲載した。その背景には、床屋の従業員による退屈しのぎの火遊びから起きた火事の消火作業において、史上初めて女性消防士が現場で命を落とすという事態に発展したことがあった。「自分の目を疑ったよ」ハウレットはそう話す。「あの曲に対する反響の大きさ以上に驚かされたね。世の中にはこんなにバカな人間がいるのかってさ。あの時、俺は理解したんだ、プロディジーの音楽は異なる2つの層にアピールするんだってことをね。ひとつは聡明な人々、もうひとつは大馬鹿野郎どもさ」

昨年行われたイギリスツアーにおいて、スマッシング・パンプキンズは「ファイアスターター」のカバーを披露した。「チャートで1位になった時以上に興奮したね」そう話すハウレットの才能に目をつけたのは彼らだけではなかった。デヴィッド・ボウイは最新作において、ハウレットとのコラボレーションを望んでいたという。「正直にいうと、あの話にはノリ気になれなかった」ハウレットはそう話す。「ベテランと呼ばれるようなアーティストとの仕事には興味がないんだ」

プロディジーはU2「ディスコテック」のリミックス依頼を却下したほか、彼らの前座としてツアーを回る話も断っている。また彼らは、所属するレコード会社のボスにさえ楯突いた。プロディジーのアメリカでのレーベルは、マドンナのMaverickだ(ハウレットは「あのレーベルにはロクなアーティストがいない」と語っている)。最近マドンナは仲介人を通し、ハウレットに次回作のプロデュースを依頼したが、彼は即座に却下した。「光栄だけど、やろうとは思わなかった。マドンナのレコードを手がけるなんて、今の自分たちにとっちゃ自殺行為に等しいからな。俺は自分のサウンドを所構わず撒き散らすようなことはしたくないんだ。そんなリスクを冒すつもりはないよ」

Translated by Masaaki Yoshida

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