追悼キース・フリント:ザ・プロディジー絶頂期の秘蔵インタビュー「人生を楽しんで何が悪いんだ?」

1997年8月21日刊行、米ローリングストーン誌の第767号で表紙を飾ったザ・プロディジーのキース・フリント(Photo by Peter Robathan/Katz/Outline)


自身が大切にするクリエイティブプロセスについて、ハウレットは次のように語っている。「俺の作曲アプローチは、同じ曲のバリエーションを無数に生み出そうとするような感じなんだ。思い描いたエネルギーが形を成すまで、同じ曲を様々なサウンドで鳴らしてみるんだよ」

ー作業中はどういった気分なのでしょうか?

「10トンのダイエットに挑戦してるような感じさ」彼はそう話す。「冗談抜きでね。イメージするエネルギーと破壊力が形になるまで、延々と試行錯誤を繰り返すんだ。曲のインパクトを最大限に発揮するために、不要な要素を削ぎ落としてシンプルさを突き詰めていく。俺が思うに、それってパンクのストレートさに通じると思うんだよ。心をかき乱すような過激なものをお茶の間まで届けること、それが俺にとっての喜びなんだ」

筆者が同行したミュンヘンでのGo Bang Festivalにおいて、プロディジーは当日のヘッドライナーとしてデヴィッド・ボウイの後に出演することになっていたが、彼らは明らかに疲れていた。世界で最もホットなダンス・パンク・アクトは、毎日のように殺人的なスケジュールをこなしていた。「意識したら負けさ」ソーンヒルはそうぼやく。「背中にしょった石炭の袋みたいなもんだ」

ー現実にはミュンヘンの渋滞に巻き込まれているヴァンの中にいるわけですが。

「世間が思ってるようなグラマラスな生活じゃないってことだな」フリントがそう話す。

ーヘリコプターの中でカクテルで乾杯するような日々ではないと。

「その通りだ」フリントが同意する。「カクテルもヘリコプターも、俺たちとは無縁だ」

会場に到着したメンバーたちは、バックステージ代わりに使っているポータルキャビンの中にいた。誰も無駄口を叩こうとしない。「このお粗末なキャビンを見ると、プロモーターたちはいつも動揺するんだ」フリントはそう話す。「ドラッグをキメて互いの顔を引っ叩きあってる、俺らのイメージはそんな感じらしい。俺たちがドラッグを要求しないことに対して、奴らはちょっと困惑してるんだ。シラフでライブができるはずがないって思い込んじまってるのさ」

マキシムはため息をつく。「スカートに着替えるか」そう言って席を立った彼が身につけたのは、緑色のヴェルヴェット生地が目を引く女性もののスカートだった(「着心地がいいんだよ。ヒラヒラ舞うところも気に入ってる」マキシムはそう説明する)。前歯に金の矯正器具をつけている彼は、歯を削って埋めるか、前歯を尖らせた上でホワイトゴールドでコーティングすることを検討しているが、彼女が猛反対しているのだという。

プロディジーのセットの冒頭数曲を、筆者はステージ脇から見ていた。中央のハウレットは何台ものキーボードとシーケンサーに囲まれており、その目の前で他のメンバーたちがパフォーマンスを繰り広げる。フリントとソーントンの2人は、舞台袖で控えている時も体を動かし続けていた。そこから見ていると、自分自身が楽しむという彼らのライブのスタンスがはっきりと伝わってくる。恍惚とした表情を浮かべるフリントをはじめ、メンバーたちの興奮がハウレットをダイレクトに刺激している。彼らの意識はオーディエンスではなく各メンバーに向けられており、そこから生まれるバンドの一体感が逆説的にオーディエンスを扇動している。


1997年、Go Bang Festivalでのライブ映像

6曲目の「ゼア・ロウ」の終盤で音が止まった時、筆者はオーディエンスをかき分けてぬかるんだ道を歩いていた。わずかな沈黙のあと、客席からはブーイングが起きた。数分後、バンドは「シリアル・スリラ」を演奏し始めたが、中盤で再び音が止まってしまう。筆者がバックステージに到着すると、怒りを露わにしながらも落ち込んだ様子のメンバーたちがキャビンに戻ってくるところだった。「くそったれが!」ハウレットが叫んだ。「ケーブルの断線か何かだろうよ。ふざけやがって、悔しくて仕方ねぇよ。『ファイアスターター』もまだ演ってないってのに」会場にはバンドの演奏が終了したことを告げるアナウンスが流れた。ブーイングはバックステージにまで届き、時々ステージに向かって物が飛んでいくのも見えた。

ボトルから直飲みした赤ワインを盛大にこぼしながら、マキシムは「クソが」と吐き捨てた。

Translated by Masaaki Yoshida

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