追悼キース・フリント:ザ・プロディジー絶頂期の秘蔵インタビュー「人生を楽しんで何が悪いんだ?」

我々がミュンヘンのホテルに戻ってくると、受付のところに10代らしき女の子のファン2名がいた。翌朝再び姿を見せた彼女らはおしゃべりしながら、メンバーたちにサインをねだっていた。筆者がドイツ語を話せないと知ると、片方の女の子は拙い英語で「森に火をつける癖」と口にし、顔をほころばせた。

バンドのメンバーたちは根負けし、サインに応じていた。

「サングラス取ってよ」女の子の片方がマキシムにそう言った。

「ジーンズを脱げよ」ハウレットはいつもの調子で、消え入りそうな小さな声で呟いた。本人はジョークのつもりのはずだが、他のメンバーたちは遠慮しない。

「ジーンズを脱いじまえよ!」マキシムはそう口にした。クスクスと笑いながらも、2人が服を脱ぐことはなかった。

何よりも自らの直感を優先し、批判や非難を勲章と受け止める(それが癪にさわるという人間は多い)彼らは、この先何度も世間の怒りを買うことになるのだろう。新作の1曲目がその格好の対象となることは、もはや確実とさえ言える。パンク/ヒップホップらしいスペーシーかつハードなビートと、オリエンタルな雰囲気のヴォーカルサンプルをフィーチャーした「スマック・マイ・ビッチ・アップ」では、マキシムが次のようにシャウトを繰り返す。「ピッチを変えろ / 俺のビッチを叩きのめせ」

炎上必至とはまさにこのことだ。


1997年、プロディジーはダンス系アクトとして初めてグラストンベリー・フェスのヘッドライナーを務めた。

「リスナーに頭を捻らせる曲を作りたかったんだよ」ハウレットはそう話す。「どこまでが許容範囲なのかを確かめようじゃんか」婉曲的ではあるものの、同曲はBボーイカルチャーへのトリビュートなのだという(問題の歌詞がハウレットのお気に入りのヒップホップグループ、ウルトラマグネティックMCズの「ギヴ・ザ・ドラマー・サム」からの引用であることを考えれば、それは十分に直接的と言える)。非難されるとしても、彼らにしてみれば望むところなのだろう。

「その通りさ」マキシムはそう話す。「あの曲を聴いて、奥さんをぶちのめしてやろうなんて思わないだろ?」

「結局さ」フリントはこう続ける。「俺たちのショーに来る女の子たちはハードコアだから、あの歌詞の意味を履き違えたりしないはずさ。Aラインの花柄ワンピースを着るような女の子の中には気を害する人もいるだろうけどさ、俺たちは売られた喧嘩は買う主義なんだ。そういうやつらは俺たちのことが理解できないし、今後もずっと理解できないだろうからな」

「ストレートな侮蔑表現には、いつだって別の意味があるもんさ」ハウレットはそう主張する。「それが皮肉ってやつだ」

Translated by Masaaki Yoshida

RECOMMENDEDおすすめの記事


RELATED関連する記事

MOST VIEWED人気の記事

Current ISSUE