Tempalayが語る「転換期の一年」

Tempalay(Photo by Shun Komiyama)

ニューアルバム『21世紀より愛をこめて』を6月5日にリリース、さらに全国12都市ワンマンツアーの開催を本日発表したTempalay。バンドにとってターニングポイントとなった2018年を振り返るインタビュー記事をお届けする。

※この記事は現在発売中の「Rolling Stone Japan vol.05」に掲載されたものです。

これまでサポートだったAAAMYYYがメンバーとして加入し、新体制となった2018年のTempalay。『なんて素晴らしき世界』の収録曲「どうしよう」がBTS(防弾少年団)のTwitterで紹介され、バズが起こったのも記憶に新しい。「転換期」の1年について小原綾斗(Gt, Vo)、藤本夏樹(Dr)、AAAMYYY (Cho, Syn)に語ってもらった。

海を越えて、BTS(防弾少年団)へ

ー2018年10月にBTS(防弾少年団)のTwitterで「どうしよう」が紹介されて、かなりバズりましたよね。あの一件をどのように捉えていますか?

小原:防弾少年団からツイートされたよ」ってLINEが来て知ったんですけど、往年のパンクバンドかな? と思って。人間椅子みたいな、遠藤ミチロウさんとか町田町蔵さんとかが昔そういう名前でやってそうじゃないですか。

ー字面だけ見るとね(笑)。じゃあ、BTSのことはよく知らなかった?

小原:知らなかったです。で、そのツイートの写真が送られてきて、見たら1500万フォロワーとかで、「あらら」っていう。

藤本:俺もよく知らなかったんですけど、前日にたまたま知り合いとBTSの話をしていて、MVとか見てて、その翌日にツイートされたからびっくりしました。

AAAMYYY:私も知らなくて。でも、知ってから街に出たら、「めちゃくちゃBTSいっぱいいるじゃん」ってなりました。

ーみんなあんまり知らなかったっていうのは結構意外ですね。ビルボードで1位になったこととか、一時期かなり話題になったけど、そういうこともあとから知ったと。

小原:だから、そんなに興奮とかもしてないんですよね、実は。そこでバッといくとかも、そんな思ってなかったというか。

ーあのツイートがあって、二次的な広がりとか反応もあったんじゃないですか?

小原:特にはないんじゃないですかね?

AAAMYYY:数字的なことはあったかもしれないけど。

スタッフ:サブスクは一気に上がりましたね。特に、海外のApple MusicとSpotifyでは今も継続して聴かれています。

小原:「ピコ太郎現象みたいになるんじゃないか?」とかも言われて、それはそれで嬉しいから、ジャスティン・ビーバーのフォロワー調べたら、1億人いて、桁違うなって(笑)。



ーそもそも「どうしよう」という曲は、「Tempalayのことをもっと多くの人に知ってもらうために」作った曲で、ある意味してやったりだと思うんですよね。同時に、「あの曲は今の自分のポップの限界で、あれ以上ポップな方によると自分を見失っちゃうから、ギリギリのラインを目指した」という話だったと思うんですけど、そうやって作った曲がピックアップされたことで、ソングライティングに対する考え方には何か影響がありますか?

小原:いや、全然ないですね。Tempalayとしてどう見せていくかは常に考えているんですけど、どう受け入れられるかはあんまり考えてないというか、Tempalayとしてどうあるかっていう方が大事なんで。「これが受け入れられたから、じゃあ、この方向でいこう」っていうのは面白くないし。もちろん、常に「受け入れられたい」とは思ってるんですけど、その手法がいろいろある中で、「BTS効果で知ってくれたユーザーに対して」とかはないです。今回のことを逆手に取るやり方とかはあると思うんですけど。
ー世界的なポップスターが日本のインディバンドの楽曲をピックアップするというのは、「ポップの概念が変化している/広がっている」という言い方もできるように思います。そこで、「今の時代におけるポップとは?」という話もしてみたいなって思うんですけど。

小原:今アメリカで売れてるポップってなんなんですかね?

ーいろんな答え方ができると思うけど、チャートだけ見たら、「今のポップはヒップホップである」っていうのもひとつの答えだとは思います。(藤本)夏樹くん、どうですか?

藤本:僕は今のポップはアイコンだと思います。その人の音楽が好きっていうよりは、その人自身が好きで、その人のものを支持するっていうのがほとんどだと思うんです。だから、「ポップな音楽とはなにか?」って言われると、めちゃめちゃ難しい。アイコンになってる人が、今どんな音楽に目を向けてて、実際やってるのかを見るしか、ポップってものがなんなのかはわからないと思います。逆に言えば、そのポップスターがファッションに目を向けたり、映像に目を向けたり、そういうのが昔以上に全部関係して一緒に動いてるのが今なのかなって。音楽だけのスターって最近はいなくて、「その人のすべてを支持する」みたいな、今のポップスターはそういうイメージですね。

小原:昔からそうではあったと思うけど、より一層そうなってきましたよね。

ーマイケル・ジャクソンなんてまさにそういう存在だったわけだけど、それがより多角化してるというかね。AAAMYYYさんはどう思いますか?

AAAMYYY:夏樹の話はその通りだなって思って、今のアメリカにフォーカスすると、例えば、テイラー・スウィフトが曲を出すってなると、本人を含むチームが常にアンテナを張っていて、気鋭のトラックメーカーとかにお願いするわけじゃないですか? そこにジャンルは関係なくて、だからポップスにR&Bもヒップホップも入ってて、多様化みたいなことはすごく感じます。日本でも、宇多田ヒカルがいろんなラッパーとかトラックメーカーを入れてるっていうのは、一緒のことだと思いますね。

ー2人の話の裏を返せば、BTSという世界的なアイコンがTempalayをピックアップしたということは、Tempalayが2018年におけるポップの大枠にちゃんと入ってるってことですよね。

小原:……ありがたいですね。

ー他人事みたい(笑)。(小原)綾斗くんはどう思いますか? 今の時代のポップについて。

小原:どうなんですかね……もはや曲にしろ媒体にしろ、飽和してるわけじゃないですか? そんな中で、なにをメインカルチャーとして捉えるかって、めちゃくちゃ曖昧というか。まあ、そういう今だからこそ、芯の深いものというか。一過性でバッと取り沙汰されても、すぐに淘汰されていくと思うんで、5年後にもちゃんと残ってるやつが、今本当のポップをやってるんじゃないかなって。自分はそう信じてやってます。

ー時流どうこうではなくて、「自分はこれ」って思うことをやること自体が、今の時代のポップの要件かもしれないですよね。

藤本:今年出たアルバムの中で、The Prodigyの新作が衝撃だったんですよ。変わらなさ過ぎて(笑)。「まだこれやってんの?」っていう。でも、そういうのを聴くと嬉しさもあるし、やっぱかっこいいなって思っちゃうんですよね。

ー「誰かがいいって言ってるからいい」っていう時代だからこそ、「自分はこれ」のかっこよさが際立つとも言えますよね。それって一歩間違えれば単なる時代遅れになっちゃうけど、でもちゃんとアンテナを張っておけば、「自分はこれ」っていうものを作ったとしても、時代と接続できる。『なんて素晴らしき世界』はそういう作品だったかなって。

小原 いいまとめだと思います。全部僕が言ったことにしといてください(笑)。

ーダメです(笑)。

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