リンゴ・スターとイーグルスのジョー・ウォルシュが語る、長年苦しんだアルコール中毒と薬物依存症の苦悩

2018年に行われたNational Council on Alcoholism and Drug DependenceのFacing Addictionガラに登場したリンゴ・スター。


―では依存症からの更生者として活動する決意をしたのはいつですか?

ウォルシュ:自分は依存を克服したあとに素晴らしい人生があると、他の人々に示すことができると気づいた。だから、公にしても大丈夫だと思った。だってもう知れ渡っていたから。依存症を克服したあとの人生を俺が示すことで一人でも救えたら嬉しい。まだ生きている意味の一つがこれだと思うね。

―リンゴ、素面になる前は、アーティストとしての人生が終わるという恐れはありましたか?

スター:最初は恐れていた。酔っ払っていない状態でどうしていいのか全くわからなかったからね。そう思うところまで到達していたのさ。素面では演奏できなかった。でも酔っぱらいとしてプレイすることも無理だった。だから、リハビリ施設に入ったとき、明かりが灯って、お前はミュージシャンだ、お前は演奏できると言われた感じだったよ。

―リハビリ後に最初のオールスターバンドを結成しましたよね。あれは1989年?

スター:ああ、そうだ。でもあれは奇妙だった。ロサンゼルスにいる俺の弁護士から電話があって、ツアーに戻って欲しい人たちがいるって。それまでソロで一度もツアーしたことがなかったのに。でも俺はバンドを組んだ。彼(とウォルシュを指差し)も参加した。実際、あれはオーケストラのようなものだったね。

ウォルシュ:彼はみんなが来るとは思っていなかった。

スター:ああ、みんなが来るとは思ってなかった。俺が知っていたのは、ドラマー3人で、その一人が自分。でもね、実はあのバンドのメンバーの大半が素面じゃなかった。でも、何とか全員でバンドの体をなすようにした。俺個人としては、それが一番大事だったね。最初の1年2年で怒りを克服することができ、今では人生になっている。今ではこれが普通の生活だし、楽しみもたくさんある。

ウォルシュ:そして、今ではあのときのメンバー(リヴォン・ヘルム、クラレンス・クレモンズ、ビリー・プレストン、リック・ダンコ)のほとんどが死んじまった。

スター:
ああ。死人オールスターバンドだな。

―オピオイド危機についてはどう思いますか?

ウォルシュ:あれはな、アメリカ国民は実情をちゃんと認識していないと思う。つまり、国内にはびこる依存のひどさをね。鎮静剤依存が何百何千という若者を殺しているのが現状だ。



―特に、多くの若手ミュージシャンに過剰摂取が見られます。常にツアーを続けるというプレッシャー、常に最前線にい続けないといけないというプレッシャーが、そういう薬物の過剰摂取に関係していると思いますか?

スター:そうだな、俺の場合は、プレッシャーは常に存在するものだった。そこで酒を飲み、そのあとでコカインなどの薬物へと進んでいたよ。

―ベテランミュージシャンの場合はどうでしょうか? 鎮痛剤を使っても、自分のキャパシティ以上の無理なスケジュールをこなそうとする人もいるかもしれません。

ウォルシュ:ああ、それは調査してみるべきことだな、うん。問題は、肉体に何らかのケガを負うと、その苦痛を和らげる鎮痛剤を処方してもらえるってこと。精神的な苦痛の場合は、酒で紛らわすことができる。苦痛を感じなくなるまで酒を飲めばいいだけ、そうだろう? つまり、どんな物質を使ったとしても、苦痛が治まったあとで、その物質がないと苦痛が消えないと信じ込むことが問題で、そうなるとその物質と折り合いをつけなければいけなくなるってこと。みんな、これに気づいていないんだよ。

スター:でもいいニュースは、最近の新人は素面の連中が多いってことだ。そうなった原因の一つは、ミュージシャンにはクレージーになる権利があるという風潮がなくなったことだよ。それに、薬物の過剰摂取が原因で多くの素晴らしいミュージシャンの才能が消えたことも大きい。俺たち(とウォルシュと自分を指す)がまだ生きている理由は俺にもわからない。そういうものだとしか言いようがない。でも音楽は新たな時代に入ったと思うし、昔に比べて少しクリーンになっている。前の世代に対する若手の反抗がクリーンで居続けることみたいだな。今どきの連中がアナログ盤に戻っているのと同じだ(笑)。

―今この時点で、親しいミュージシャンが依存症で苦しんでいたり、確信はないけどそう見えたりした場合、密かに助言を与えますか?

スター:言うとしてもちょっとだけだな。

ウォルシュ:相手に受け止める準備ができていないと、こちらから手助けできないという事実が本当にもどかしい。指摘することはできる。相手はその言葉を聞くかもしれないし、怒り出すかもしれない。彼らがその話をしたいと言ってきたときには、彼らの話し相手になることもできるし、例をあげて素面の素晴らしさを説くこともできる。でも、俺は町をドライブしながら、わざわざ困っている人を探して、彼らに助言するなんてことはしないね。

Translated by Miki Nakayama

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