リンゴ・スターとイーグルスのジョー・ウォルシュが語る、長年苦しんだアルコール中毒と薬物依存症の苦悩

2018年に行われたNational Council on Alcoholism and Drug DependenceのFacing Addictionガラに登場したリンゴ・スター。


―最初に素面になったとき、音楽を疎ましく感じたことはありますか?

ウォルシュ:俺は恐怖ですくんだよ。素面で人前に出て失態を晒すことが恐ろしくて仕方なかった。

スター:俺たちは素面でどうするのか知らなかったんだよ。

ウォルシュ:最初の10回ぐらいは本当に辛かったね。

―本当に演奏できるか確認するために一人でプレイしてみたときはどうでしたか?

ウォルシュ: 1年くらい曲作りをしなかった。というか、できなかった。落ち着いて曲作りを始めようとすると、イライラしてきて、頭の中で「こういうときに必要なのは……」という悪魔の囁きが聞こえる。

スター:その通り。

ウォルシュ:でも、それに従うことは許されない。

―だから作れなかったと?

ウォルシュ:素面でいることが大前提だった。そこで思ったのが、この先もう曲は作れないかもしれない、それでも仕方ないな、だった。ライブで演奏するのも同じだったよ。俺自身は違和感を感じて嫌だったが、他のミュージシャンたちが徐々に「ジョー、以前のお前も上手かったけど、今のお前のプレイの深いところに前とは違うものを感じる」と言うようになった。

―彼らはどんなことを言ったのですか?

ウォルシュ:俺の姿を見て彼らも素面になりたいと言った。実際にそう言って素面になったやつが何人かいる。とはいえ、俺は自分のやり方で生きていた。自分のことだけ考えていたし、違和感も感じていた。でもある日、できると気づいたんだよ。これができるって。それに気づいたあとは、素面で演奏するのに影響を与える物質を摂取するなんて、想像すらできなくなっている。考えることすらしない。



―リンゴ、最初に素面で演奏したときはどんな感じでしたか?

スター:演奏も大丈夫で、ステージに立つのも、人前に出るのも問題なかった。でも、そのあとで俺の全身が叫んだんだよ、「クレージーになろうぜ」って。ライブ後はいつだって酒だった。ライブをやって、そのあと酒でクレージーになるってパターンでね。

ウォルシュ:酒はご褒美だったのさ。

スター:そういうときは、ドラムに座ったままで身じろぎしなかった。バーバラも、他の連中も俺に話しかけることすら躊躇したくらいだった。とにかくそうやって耐えるしかなかった。体中、筋骨も血管も脳みそも「羽目を外そうぜ」って、俺をそそのかすわけだ。でも耐えたよ。そうやってケリをつけた。素面になりたいなら、素面になれる。眼の前に素面があるんだから、近づいて手に入れればいいだけだ。

―ジョー、ニュージーランドで得た閃きについて教えてください。何度も再発を繰り返して、丘の上での閃きがあるまで為す術がなかったと言っていましたが。

ウォルシュ:あれはホークスベイというマオリ族の古代の首都だった場所で、先住民が住んでいる。ニュージーランドで彼ら先住民と友だちになり、今では荒れ果てたかつての首都の要塞に招待された。ここは今でも神聖な場所で、その丘の頂きに俺は立った。海を見て、農園を見た。ニュージーランドは美しい国だ。そのとき、意識が透明になる瞬間が訪れ、死ぬことだって、やめることだってできると閃いたたんだ。

―それが起きたときの年齢は?

ウォルシュ:45歳くらいだ。

―それまでに同じような体験をしたことはあったのですか?

ウォルシュ:その前にも何度かあって、「これに関して何かしなきゃ」とか閃くことがあった。でも、その頃は昼時には酔っ払っていたから。でもこのときは、神様が「なあ、私を試してみたらどうだ?」と言っているように思えたんだ。

―そして、文字通り山を歩いて下って、リハビリ施設に戻ることを決め、それを実行したわけですね。

ウォルシュ:その通り。アメリカに帰国し、リハビリ施設の手配も自分でした。でも怖かったね。恐怖でおののいたくらいに。

―どうしてですか?

ウォルシュ:素面がどんな状態か知らなかったから。素面になったら、毎日ネクタイをして、会社に行って働くものだと思っていたが、それは俺には当てはまらない。昔から上手くできていることを続けることだってできる。でも新たにやり方を覚えなければならない。素面になると、毎日一つずつ生活の仕方を覚えるものなんだよ。そして、素面のままで普通に生活できるくらい慣れると、安心して生きることができるってわけだ。

―リンゴ、以前ビートルズについて聞かれて「世界が俺たちに意味をもたせてくれた」と答えていました。これは世間から「レジェンド」と一括りにされることのある種の客観性を仄めかしている感じもするのですが

スター:俺の場合、あのバンドに加入していて、あのメンバーがいたということがラッキーだった。うん、2ヶ月くらいで誰かがいなくなる可能性だってあった。俺がやめるとか、ジョージがやめるとか、ジョンがやめるとか。飲酒とは関係ないけど、これまで一番悲しかった瞬間の一つが、エルヴィスに会いに行ったときだったよ。彼の周りには12人のスタッフがいて、彼の指示通りに動いていた。そのとき、エルヴィスが「サッカーをしよう」とか何とか言った。そしたら、全員が走って外に出て、彼とサッカーを始めたんだ。ソロアーティストって本当にハードだよ。

ウォルシュ:ああ、孤独なものさ。

スター:俺にはそういう経験が一度もないと思う。いいバンドといつも一緒に活動していたし、今でも自分のバンドがあるし、おかげで友だちも周りにいてくれる。これって本当に大事なことだと思うよ。

ウォルシュ:成功と信頼性を混同しちゃいけないってこと。俺のような人間がステージに立って2時間半演奏すると、かなりカッコよく見える。俺たちはカッコいい、だろ? でも、世間はステージを降りた俺たちもカッコいいと勝手に思い込む。でも普段の俺たちはカッコよくなんかない。みんなと同じように問題を抱えた人間だよ。普段の生活はステージでの姿みたいに誇張されたものとは全く違う。だからロックスターになることが問題解決の手段だと思うのは間違っているよ。ロックスターになることは問題の始まりに過ぎないのだから。

スター:このテーマで語るのはかなり大変だ。だって他の連中と同じくらいやったのに、俺たちはまだ生きている。俺たちは素面だし、この世を去る日がいつかは誰も教えてくれない。トム(・ペティ)がいなくなって、俺がここにいる理由が理解できないし、これは答えのない問いなんだ。でも、最近一緒に活動しているバンドは全部、絶対とは言えないけどかなりの部分で素面がいいという考え方が浸透しているよ。

Translated by Miki Nakayama

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